ステークホルダーへのレポーティングと同様に大切なことは、研修に関する記録、ドキュメントをきちんと整理して残しておくことです。日本企業においては、人材開発や研修開発の専門家として雇用されている人はまだまだ少なく、研修開発担当者が、さまざまな経験やノウハウを蓄積したとしても、数年後に人事異動となってしまい、そのノウハウが受け継がれることなく途絶えてしまう、ということがしばしば起こります。

 特に研修という出来事・実践は、あえて記録を行っていなければ、後に何も残りません。だからこそ、その実践を継続し、より良いものにしていくためには、意識的に多くのドキュメントを残す必要があるのです。次の研修開発に生かせるよう、ぜひ、研修の企画書、報告書、評価などの文書類はもちろんのこと、研修風景の写真や動画なども使って実践を残すことを心がけてください。

 これまで、5回に渡って「研修開発入門」の中から研修開発に関するテーマをいくつかピックアップし、再構成する形で連載してきました。しかしながら、この連載でご紹介できたのは、研修開発という仕事のごく一部についての内容です。特に研修準備から研修実施(教えることの技法)については、「研修開発入門」では4章分を使って解説しているのですが、お伝えすべき内容があまりにも膨大にあるため、連載中触れることができませんでした。

 冒頭でA子さんは「研修開発の仕事は『前向きな仕事』ですよね。よい場を生み出せれば、会社にとっても、社員にとっても、自分にとっても、『プラス』を生み出し『損』を与えることがない」と話しています。

 A子さんのように、企業内で新人研修、階層別研修、管理職研修、その他様々な研修の開発に携わることになった方が、「プラス」を生み出すために「一番最初に手に取れる本」として、様々な学術的知見、アイディア、ノウハウを集めて著したのが「研修開発入門」です。この本の前書き・後書きにも書きましたが、この本は、これまで言われているあらゆる知見・ノウハウを集めた本です。しかし、そこに込められた思いは「この本に書いてあることを、金科玉条のように実践すること」ではありません。

 この本の読者の方々が、この本で述べられていることを参考に勉強会をしたりしながら、つながったりすること。この本に書かれていること以上のノウハウを持ち寄ったりできること。つまりは、この本の「一歩先」の未来をつくるためにこそ、この本は生まれました。

 近い将来、志ある読者の皆さんの手によって、この本の内容がアップデートされ、新たな知見とノウハウが創り出され、「上書き」されることを願います。

◆新刊のお知らせ◆

さまざまな「事後フォロー」が<br />研修の効果を高める

『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』

 人事・人材開発・研修開発担当者必携!企業内で研修を企画・立案し、自社に最もフィットした 研修を実施・評価していく全プロセスを詳細に解説した企業内研修開発のバイブル的入門書。研修開発に関する理論、原則などアカデミックな知見も豊富に盛り 込まれつつ、実務担当者への取材から得られた実務に生かせるノウハウも多数紹介。研修講師として登壇する社内講師の方にも役立つ内容です。

◆『研修開発ラボ』開講のお知らせ◆

「研修開発入門」をテキストにした、“研修を作るための研修”『研修開発ラボ』が開講されます。

第1期 (終了):2014年7月17日(木)~18日(金) 各9:30~17:00
第2期 :2014年10月16日(木)~17日(金) 各9:30~17:00
第3期 :2015年2月19日(木)~20日(金) 各9:30~17:00

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