実際、「第1の矢」は財務省出身の黒田東彦日銀総裁、「第2の矢」は総額10.2兆円の12年度補正予算、総額92.6兆円の2013年度予算という過去最大規模の予算編成を行った財務省が放っていた(第61回・P.2を参照のこと)。つまり、財務省は、アベノミクス「第1の矢」「第2の矢」によって増税実現の環境を整えていったということだ。

 谷垣新幹事長は、財務省と強い関係を持つ財政再建派だ。今後、予定通りに消費増税を実現するために、その「痛み」を和らげるための税制特別措置、補助金、補正予算などさまざまな方法を容認するかもしれない。また、成長戦略の実行の際、族議員・各省庁・業界ができるだけ多くの予算を成長戦略として獲得しようと動くことも、許容するかもしれない。

 しかし、それが谷垣新幹事長の強調する「党内融和」ということならば、かつて自民党政権が犯した愚を繰り返すことになる。結局、既得権者に対する「優しさ」から改革が骨抜きにされ、無駄な支出で財政赤字が拡大し、国民を苦しめてしまうかもしれないのだ。

女性活用人事:
意思決定に関われないパフォーマンスとしての女性活用

 幹事長、総務会長に大ベテランが起用された一方で、政調会長には衆院当選3回の稲田朋美行政改革相が抜擢された。安倍首相の掲げる「女性活用人事」だが、それだけではない。稲田新政調会長は、行政担当相として公務員制度改革や規制改革で9つの分野を担当し、実績をあげた政治手腕が高く評価されている。

 特に、農協(JA)改革では、JAグループの全国農業協同組合中央会(全中)改編に取り組み、農林族の抵抗を抑えた。新しい成長戦略に自ら考えた「自律的な新たな制度に移行」との文言を盛り込んだのだ。農協法で認められた、各JAへの指導・監査という「特権」を持つ組織から、任意団体へ衣替えする道筋を付けたのだ。

 だが、稲田新政調会長が、党に移っても同じように政治手腕を発揮できるとは限らない。これまでは、内閣府で安倍首相の庇護を受けながら農林族と対峙できた。しかし、二階新総務会長が睨みを利かす党内では、新政調会長は無力になるだろう。もちろん新総務会長は経産相経験者として、成長戦略やTPP推進の側に立って農林族・農業関係者を抑える可能性はある。だが、その際も農林族・農業関係者が既得権を失う「補償」として補助金、公共事業の大々的なバラマキが行われるだろう。いずれにせよ、稲田新政調会長が党内の意思決定に入り込む余地はなさそうだ。