「水陸両用作戦」のイノベーションとは

 イノベーションという側面から水陸両用作戦を見ると、2つの特長が明らかになる。

 1つは、ハードウェアの革新である。必要な特殊装備として、3つの装備が開発された。

 まず、上陸用舟艇の開発である。船首の板が前に倒れて、人員や車両の渡り板となる仕掛けであり、この開発にヒントを与えたのが、皮肉なことに日本陸軍の上陸用舟艇「大発」だったという。この革新の結果、LCVP(車両・人員揚陸艇)が欧州戦域においても活躍する。

 次いで、平底船である。戦車やトラックといった人員よりもはるかに重い装備を輸送し、浅瀬まで近づいて上陸させる平底船の開発は至難を極めたという。30トンのシャーマン陸軍戦車が開発されるのに合わせて、LCM(車両揚陸艇)として、結実していくことになる。

 そして、水陸両用上陸用装軌車(LVT)の開発だった。水上を進む浮力を得るため車両の軽量化が必要だったが、それは当時の新素材であったアルミニウムを採用することで解決し、水陸両用の移動手段としてキャタピラを使用した。

 興味深いことに、これらの革新に力をふるったのはヒギンズとロープリングという2人の民間人だった。海兵隊は彼らの技術に目をつけて、彼らの協力を得て、軍事に転用したのである。

 もう1つは、ソフトウェアの革新である。新たに開発された装備を有効に利用するために、兵員の教育訓練が徹底された。

 座学よりも、実際に装備を背中に背負って行う演習に重点が置かれた。なんといっても、普通の兵員が背負う荷物だけで38kgもある。それに加えて、9~24kgもある銃器を持たされた状態で、敵前に強行上陸するのだから、生半可な訓練では太刀打ちできないからだ。

 さらに、新兵訓練として、「ブートキャンプ」が設けられた。彼らをしごくのは実戦経験のある下士官である。体力の強化や、兵器の熟練だけでなく、海兵隊としての心構えなどメンタルな面の訓練も行うようになったのである。

 

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