ヘッジファンドは、金融犯罪の標的となり得るリスクを抱えている――。
このように聞けば、驚く投資家も多いだろう。
高度に成長した現代の金融システムは、新たな投資スキームを常に生み出しながら、我々に多くの投資機会を提供している。
なかでもヘッジファンドは、近年の国際金融市場において、1990年以降、重要な投資機会の1つとして急速にその存在感を増している。
彼らは、機関投資家や富裕層から私的に集めた大規模な資金を元手に、あらゆる金融商品に積極的に投資することで知られている。そして、米大手証券ベアスターンズ傘下のヘッジファンドが、サブプライムローンに関連した運用に失敗したことが明るみに出る2007年6月までは、世界の過剰流動性を牽引して来た象徴的な存在だった。
“Hedge Fund Research社”(注1)によれば、07年3月末時点でのヘッジファンド総運用資産残高は1兆5684億ドル(約188兆円)に上っており、およそ10年で約4.5倍にまで成長したという。(注2)
だが、外部から見れば、その実態は謎のベールに包まれている場合が多い。1949年に誕生した言われるヘッジファンドは、およそ半世紀という時間をかけて、独自の発展を遂げて来た。その結果、高い金融知識を有するプロの投資家や金融関係者から見ても、「実態を捉えにくい投資手法をとっている」という印象が強い。
このように成長して来たヘッジファンドは、様々な投資機会を提供する一方で、その特性上、「金融犯罪のターゲット」とされてしまうリスクも持ち合わせているのだ。
金融危機に苦しむ関係者にとって
投資サギの痛手はあまりにも大きい
そのパターンはさまざまだが、わかり易いのが「架空投資サギ」だ。これは“ヘッジファンド”と称して投資家を複雑な投資スキームに迷い込ませた上に、投資額を騙し取るという、代表的な金融犯罪である。
架空投資サギと言えば、元NASDAQ証券取引所の会長であり、高名な慈善家である「バーナード・ マドフ(Bernard Madoff)事件」が有名だ。