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「働き方」という経営問題―The Future of Work―

「顧客に会わない営業」はなぜ生まれたのか?
IT企業があえて挑む“PC強制撤去”の効果

河合起季
【第10回】 2014年9月19日
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パワポ、社内CCメールを
全社員対象に禁止

 このようなITの弊害は、ドリーム・アーツも例外ではなかった。そこで、同社では2011年秋から「パワポ資料の社内会議使用」と「社内CCメール」「会議へのPC・スマホ持ち込み」を全社員対象に禁止した。

 「資料を持ち寄る会議では、ネットで寄せ集めた知識を披露するばかりで、自分で考えた知恵やアイデアの出し合いにはならない。また、会議中にPCやスマホを始めるのは、自分の世界に入り込み、議論に参加していないということ。そういう人は会議に不要、出て行ってもらいます。

 会議は本来、ホワイトボードにみんなの意見を書き込むなど、多角的に議論し、新しいアイデアや付加価値を生み出すのが目的です。それぞれが知恵をふり絞り、自分の考えを出し合って議論しなければ意味がありません」

 パワポを禁止したことで、資料を飾りたてる時間は取引先訪問や実施調査、考察に振り向けられるようになった。こうしたプロセスから導き出された知恵やアイデアには信念があり、本人も容易に曲げない。自ずと会議は熱い議論が交わされるようになっていったという。

 一方、社内CCメール禁止の効果はたちまち表れたそうだ。

 「メールの数は圧倒的に減りました。私の場合、3分の1以下になりましたが、CCの嵐だった部長やリーダークラスはもっと減少したでしょう」

 これほど激減したにもかかわらず、CCを禁止したことによるマイナス点は1つも出ていないという。「社内CCメール禁止」の威力はかなり大きそうだ。

営業担当者からPCを取り上げ
自分の席を廃止した

 以上のような取り組みを含め、IT断食の中で最も効果があったというのが、営業のワークスタイル変革だ。営業担当者(十数名)のPCを撤去し、フリーアドレス制を導入、ITツールはiPadだけにした。

 「それまで営業担当者は、お客様からこんなことを知りたいと言われると、その資料をパワポでつくり、お客様のところへ持っていって説明していました。そのため、お客様を訪問するよりも、パワポの作業時間のほうが圧倒的に長くなっていたのです。この状況から脱却するため、まずはお客様のところへ行くしかない環境に変えたわけです」

 そのうえで、月間の面談件数目標を自主的に決めさせた。まずは、面談の内容よりも、より多くの顧客に会うことを目標にしたのだ。結果、月平均40件だった面談数が、3ヵ月後には200~400件にも増えたという。

 訪問先は、既存の取引先や過去のセミナーに参加した企業が中心。同社の場合、顧客ごとに課題解決ソリューションの提供を目指しているため、営業のリードタイムが数ヵ月から数年と非常に長くなる。したがって、毎月200~400件の中には毎週足を運ぶ取引先も含まれるわけだが、それにしてもこの数はスゴイ。

 だが、ここで気になるのは、同じところに何度も訪問して話すことはあるのか、ということだ。

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人口減少による働き手の不足と経済・社会のグローバル化が、企業経営を取りまく大問題となっている。そのなかで、企業が競争優位性を築くためのキーワードとして浮上しているのが「ワークスタイル変革」だ。識者への取材や企業事例の紹介を通じて、すべての企業と働く人に問われている「働き方」の課題を明らかにしていく。

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