スケッチ1枚が説得力を高め
作るエネルギーを生む

意図せず、とはいえ同じような価値観を持つ人と出会うには、何か工夫が必要ですよね。

根津 自分がやりたいことを発信し続けることでしょうね。その際、スケッチの1枚もあれば説得力が高まりますし、CGならなおいい。CGっていい意味で人をだませるツールなんですよ。一目で人を魅了できる。人間って面白いもので、手に届かないようなものでも、具体的なビジョンを見せられ、ひとたび「いいね」と思っちゃうと、無理してでもそこに近づこうとする。そこにエネルギーが生まれます。ですから、メンバーが共有できる理想像やビジョンを作ることがデザイナーの仕事だと思っています。

ゼクウはスケッチ段階でかなり完成品に近い色やラインまで描かれていますが、グラフィック面でも完成形が最初から見えていたということでしょうか。

左右一対の板状アルミ合金フレームに挟まれたコンポーネント

根津 確かにゼクウは、スケッチと完成品とのズレが少なかったですね。グラフィックというと「加飾=後からつけ加えるもの」というイメージがありますが、ゼクウは、いってみれば造形全体がグラフィカルです。側面のデザインは同心円状になっていて、後輪の下の地中にコンパスの針を当てて何重にも円弧を重ねたような造形になっている。シートあたりに空白があるのは、人が座ることでデザインを完成させようとしたためです。ウロボロスから得たヒントもデザインに生かしています。ウロボロスでは、リアサスペンションの根元に、アルミを削り出した板状の部品を2枚並べて使っていますが、これは、大きな設備を持たない小さな工場でも、正確に部品を作るための中村さんの工夫だそうです。それを聞いて「じゃあ、ゼクウでは全部でそれをやっちゃえ」と思ったんです。カウルの下に見えている黒い部分がメインフレームで、左右一対の大きなアルミ合金の削り出し板でできています。この2枚の間に、フロントサスペンション、バッテリー、モーター、リアサスペンションなどのコンポーネントを全てはさみ込みました。まさに、ウロボロスの部分構造を全体に広げたイメージです。この構造のおかげで、側面にグラフィカルなデザインが活かせるようになりました。