ニデックのサプライヤーの工場内に保管されているニデック子会社の金型。保管料は2025年秋まで支払われていなかった Photo by Hirobumi Senbongi
不適切会計疑惑を巡って第三者委員会の調査が続いているニデックグループが、サプライヤーへの理不尽な要求による売掛金の減額などで利益を捻出しようとした疑いがあることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。特集『永守ニデック 最終審判』の#4では、部品メーカーを酷使した、ニデックグループの購買部門による利益捻出方法に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
下請法違反で勧告を受けた後も一部子会社で違法状態続く
サプライヤー搾取の結果の表れとみられる“財務データ”とは
ニデックグループは、サプライヤーに大幅な値下げを強いることで有名だった。部品メーカーに価格交渉で“まけさせる”ことは、同社の経営戦略の根幹だったといっても過言ではない。以下は、永守重信前グローバルグループ代表(前取締役会議長。12月19日に退任し、現在は非常勤の名誉会長)の著書の一節だ。
「一般の会社では営業部門に優秀な人材を持っていき、購買部門には営業では十分な成果を上げられない人材が行くというようなケースも多いようだ。それでは購買に力は入らなくなる。そうではなく購買にこそエース級の人材を配置するべきだ、というのが私の考えである」(『永守流 経営とお金の原則』)
永守氏は同著で、「Mプロジェクト(Mは『まけてくれ』の意味)」なる調達戦略によって、原価を下げてきたことがニデックの成長につながったことを強調している。
実際、ニデックグループによる値下げ攻勢は苛烈だった。
ニデックの子会社に部品を供給してきたサプライヤー幹部は「新型コロナウイルス禍の前までは毎年20%の値下げを求められた」と明かす。
20%の値下げを実現させるのは容易ではない。しかし、ニデック元役員によると、実際にそのレベルのコストダウンに成功した例があった。
1998年に日産自動車から日本電産(現ニデック)に転じ、同社取締役として買収後の企業再生を任された川勝宣昭氏は、自著の中で「(98年、日本電産と芝浦製作所、東芝が設立した合弁会社、芝浦電産の)高性能モーターも単価が年率20%下落し、3年で半分になりました」と述べている(『日本電産永守重信社長からのファクス42枚』)。
川勝氏は、モーターの原価低減の手法の一つとして、永守氏から「5段階ネゴ交渉方式」を実践するよう指示されていた。どういう交渉方式かというと、第1段階の値下げ交渉は購買担当者が行い、第2段階は購買課長、第3段階は購買部長、第4段階は購買担当役員、そして最後の第5段階として川勝氏自身が乗り出していくというものだったという。
こうした手法を川勝氏は「攻撃型購買」と称しているが、5回もの値下げ要請を受けるサプライヤーはたまったものではない。
川勝氏は同書で、「値下げに協力してくれた材料、部品メーカーには、翌期の発注は値下げ率よりも多く発注」するように気を付けていたとも記している。だが、車載モーターの部品を納入するメーカー幹部は「ニデックグループの車載事業の伸長が計画より遅れ、低収益になる中で、『来期は発注を増やすから値下げに応じてほしい』という言葉を信じられなくなったので取引を減らした。ニデックグループは足元で、値下げさせやすい中国資本のサプライヤーとの取引を増やしているようだ」と話す。ニデックが、日系サプライヤーからの求心力の源泉だった「成長神話」が崩壊しつつあるのだ。
同幹部によれば「ニデックグループの購買担当者が不当な要求をしてくること、そして、それが不適切会計につながっているのではと疑ったことも、同社と距離を置く原因になった」という。どういうことか。
次ページでは、ニデックグループがサプライヤーを酷使して、架空の利益を捻出していた疑いがあることを、複数の部品メーカーの役員や社員らの証言から明らかにする。







