都心3区に点在する高級住宅地の中でも、最も由緒正しいお屋敷街の性格をもっているのが、高輪から白金に広がる高台である。江戸時代の武家屋敷、近代の華族・要人の邸宅、現代では最高級グレードのマンション。その時々の主役たちがここに住み、最高峰の生活を享受する。そして今でも過去の名残を保ちながら、主役であり続けているのである。

東京庭園美術館
[東京庭園美術館]
アール・デコの名建築、かつては宮家(朝香宮)の邸宅だった。

 昔と今のステイタスが同居する街高輪と白金、白金台に連なる住宅地は、地形的にみて一つの台地を共有している。品川駅から望む高輪の高台と、広尾側から見上げる坂の上はつながっているのである。そして、港区を代表する高級住宅地、つまり東京・日本の頂点に立つ邸宅地の一つがここにある。

 この街の特徴は、いくつかの時代で常に高級住宅地、人々から憧れをもってみられる生活の舞台であり続けたことである。江戸時代には大名の下屋敷、明治時代には政財界の要人たちが住む大邸宅を建てるべき場所に選ばれた。華族、旧皇族家も同様である。そして現在、別格のハイグレード・マンションが建設される場所であり、企業のトップ、芸能人らが好んでここに住む。

 時代は変わっても、そして住む人が入れ替わっても、ステイタスは一定であり、きわめて高いレベルを示したままなのである。

 現在の街並みはそうした時代の痕跡をわずかずつ残し、昔からこの街がお屋敷街であった証拠をみせている。実際、この街には現在だけでなく、過去の栄華をしのばせる場所が多い。歴史的な建物の位置を地図上で結ぶと、格好の散歩コースになるのである。

 高輪側から歩けば、旧三菱財閥の岩崎別邸であった関東閣、味の素の初代社長が私邸としていた味の素高輪記念館、高松宮邸。白金側には旧朝香宮邸だった東京都庭園美術館など、美しい洋館建築は枚挙にいとまがない。

 これに加えて江戸時代の名残を残す数々の寺院がある。赤穂浪士の墓がある泉岳寺はその代表格である。