「どちらを選んでも答えはイエスになる」というダブルバインドの質問を投げかけることで、相手には「自分で選んだ」と錯覚させながら、自分の思惑どおりにイエスを引き出すことができます。

 たとえば、気になる相手をデートに誘いたい。そんなとき、あなたならどう声をかけますか?

(1)「映画に行かない?」
(2)「映画に行くなら、AとB、どっちが観たい?」

 (1)だと、「行かない」と言われれば、それで終わりです。イエス・ノーで答えられる質問では、否定を封じることは難しくなります。

 一方、(2)は「ダブルバインド」を利用した心理誘導の質問です。こちらでは、相手がAと答えようが、Bと答えようが、「じゃあ一緒に行こう!」とデートにこぎつけることができます。

 さらに、「AもBも嫌だな。Cが観たい」「映画より買い物に行きたい」と、相手の要求を引き出すことも可能です。それはなぜか? この質問に答えるということは、「映画(デート)に行く前提を受け入れた」ということになるからです。

 つまり、ポイントは「本当に言いたいこと」を「前提」として隠してしまい、あたかもA or Bと選択させることが重要かのように錯覚を起こさせることにあります。

 これはビジネスシーンで利用しても効果を発揮します。AとB、どちらを選ぶかで迷っている相手に対し、「Aを選ぶと〇〇というメリットがあるし、Bを選ぶと〇〇というメリットがある」と、どちらを選んでもメリットがあるというダブルバインドを作り出してあげるのです。これだと、相手は「メリットがある」ことを前提に選ぶことができるので、本当に欲しいものを選ぶことができます。

 商談などではあえて「今、お使いのものを使い続けるのも正しい選択ですし、今、この新製品を買うのも正しい選択です」などと、「契約してもしなくてもいい」というような状況にすると、「この人は、自分のことを本当に考えている」と信頼を得て、契約につながることもあります。