私たちは無意識に、他人を誘導する働きかけを日常的に行っている。たとえば、友人が頼んだ料理を見て、「わあー美味しそう!」と思わず言ってしまうことがあるが、すると、友人は例外なく「食べる?」と勧めてくれるはず。これは、あなたの働きかけによって、友人が「料理を分けてあげる」という行動へと誘導されたのだ。
誘導は直接的な命令やお願いをすることなく、「自分が選んだ」「自分の意思で動いた」と相手が思ってこそ意味がある。
そのために必要なのが「暗示」のテクニックだ。今回は、「言葉」によるコントロールのテクニックを紹介する。
「特別な人」になり、相手を誘導するためのステップ
ここまで、人の心理を読み解いて、相手の「特別な人」になる方法をお伝えしてきました。私たちは、自分が信頼している「特別な人」の言葉を信じ、「特別な人」から物を買い、「特別な人」からの好意を受け入れます。相手の「特別な人」になれば、相手を誘導することさえも可能です。ここでそのステップを確認しておきましょう。
ステップ(1)「ラスを開く」
人はラスを開かないと、何を話しても、どんな情報を与えても受け取ってもらえません。前回もお話ししましたが、ラスとは、入ってきた情報を自分に必要のあるものか、そうでないものかを瞬時にふるいにかける脳の機能です。ラスによるジャッジは潜在意識下で行われるため、まずは相手に好印象を持ってもらうことが大切になります。
そのためには、態度などに気をつけながら積極的に自己開示をし、「見知らぬ人」から「親しみのある人」になれるように働きかけます。
ステップ(2)「ラポールを築く・強化する」
次のステップとしてラポールを築きます。ラポールを築くということは、「特別な人」になるということです。人は話の内容よりも、誰が相手かによって、その言葉や提案を受け入れるかどうかを判断しがちなため、「特別な人」になることができれば、あなたの思いに沿った行動を取ってもらいやすくなります。
ラポールを築くには、相手の心を読んで、感情を満たしてあげることです。その積み重ねによりラポールが強化され、あなたに全幅の信頼を寄せるようになります。ラポールを築き、強化するためには、「観察」「分析」「理解」「同調」「確認」といったテクニックが有効です。これについては、拙著『心が読めれば人生が変わる!』に詳しく書きましたので、興味のある方はそちらをご覧ください。
ステップ(3)「誘導する」
そして、確かなラポールを築いたところで、あなたの頼み事を叶えてもらったり、指摘を聞いてもらったりできるように「誘導」します。
ラポールを築き、相手が心を開いてくれるようになったら、最後は「誘導」のテクニックで、仕上げとも言うべき人間関係がグッと楽になります。