和田 考え方を変えるだけでも、ずいぶん人生が変わりますよね。
岸見 和田さんが唱えている「陽転思考」と似ていると思います。アドラー心理学では、「意味づけ」という言い方をしますが、自分や他人についての意味づけを変えればライフスタイルを変えることができる。これは事実上、自分が変わったことと同義です。
京都府生まれ。作家、営業コンサルタント。人材育成会社「和田裕美事務所」代表。小学生のときから通知表に「もっと積極的にお友だちとお話ししましょう」と書かれ続けたほど引っ込み思案な性格にもかかわらず、上京後は外資系企業の営業職に就く。当初はおどおどして相手の目を見て会話することもままならず、長い間つらく厳しい下積み時代が続いたが、独自の「ファン作り」営業スタイルを構築し、試行錯誤を重ね、徐々にプレゼンしたお客様の98%から契約をもらうまでになる。それによって日本でトップ、世界142ヵ国中2位の成績を収めた。その経験から「考え方」と「行動」で運命はいくらでも変えられるのだと実感し、自分が行っていた思考パターンを「陽転思考」として確立する。執筆活動の他、営業・コミュニケーション・モチベーションアップのための講演、セミナーを国内外で展開している。女性ビジネス書の先駆けとして大きな反響を呼んだ『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)がベストセラーになる。ほかに『人生を好転させる「新・陽転思考」』(ポプラ社)、『和田裕美の人に好かれる話し方』(大和書房)など著書多数。最新著作は『「私は私」で人間関係はうまくいく』(中経出版)。
和田 その部分が、アドラー心理学のなかで一番重要な考え方だと思います。「人生を自分のものにしていくことができる」ということのベースとなる発想ですね。前に先生にお話を聞いたときに、朝帰りする夫が浮気をしているのではないかと悩む妻のエピソードがとても印象に残っています。
岸見 妻が夫に朝帰りの理由を聞いたら、「職場を22時頃に出た。すごく疲れていたのでこのまま車を走らせていたら事故に遭ってしまうと思い、車を路肩に停めた。そして気がついたら朝まで寝ていた」と言ったそうです。どうですか。信じられそうですか?
和田 信じたほうが幸せだと思いますけど、疑ってしまうかもしれませんね。
岸見 そこで意味づけを変えるのです。どうするのかというと、兎にも角にも夫が帰ってきたことはうれしいわけですよね。事故に遭われたら困るし、仮に浮気していたとしても家庭を選んだから帰ってきたわけなので。そこで、「お疲れさま」と言ってお茶を出しましょうと助言しました。
自分を好きになるためには
「他者貢献」が必要
和田 すごい発想ですね……(笑)。「浮気しているんでしょ!?」と追及しないまま、旦那さんが朝帰りするたびに、奥さんがニコニコしながらお茶を出すわけですよね。
岸見 人は、信頼し続けてくれる相手を裏切り続けることはなかなかできません。だから私は、特に若い女性によく言うのです。「男性に絶対言わせてはいけない言葉があります。それは、『お前は俺のことを信じられないのか』という言葉です」と(笑)。
和田 多くの方が「とっくに手遅れだ」と思っているかもしれません(笑)。