意味づけを変えれば
過去さえも変化する
岸見 私自身も背が低いことで長く悩んでいました。あるときそれを友人に打ち明けたのです。すると「君には人をくつろがせる才能がある」と言われました。たしかに、背が低いので人に威圧感を与えることはありません。その一言で僕の人生は変わりました。
和田 たしかにカウンセリングのときなど威圧感がないほうがよいですよね。ちなみに先ほどの太っている男性は私の担当編集者なのですが、「そうか僕はデブを言い訳にしてたんだ」と気付き、実は最近ダイエットしたんです。で、6キロも痩せたんですよ(笑)。
岸見 モテると良いですね(笑)。どれほど努力しても、自分の気持ちが伝わらない人はいます。皆から好かれることはあり得ないです。でも、そうした人ばかりではないということは知ってほしい。そして新しいライフスタイルを選べるようになってもらいたい。アドラー心理学や『嫌われる勇気』がそういうきっかけになればいいと思っています。
和田 それで人生が変われば素晴らしいですね。
岸見 自分の見方の変化に応じて、過去も変わっていきます。私は父親との関係があまりよくありませんでした。小学生のときに殴られたという記憶を引きずっていたからです。けれど、今となってはその記憶も事実だったかどうかわかりません。二人きりでいたときに起きた出来事なんてもはや誰にもわからない。しかし、そういう過去の記憶を大人になってなぜ思いだすのかというと、「父親と仲良くなってはいけない」と決心していたからです。うっかり仲良くなりそうになったときには、昔の記憶を呼び起こしていました。でも、それをやめたのです。
和田 そんなことをしても意味がないですものね。やめたのは、何かきっかけがあったんですか?
岸見 あるとき、父から電話がかかってきたのです。「お前のやっているカウンセリングというものを受けたい」と。
和田 えっ? 実のお父さまからですか?(笑)