「良い女でいることが仕事」の職業は魅力的に映る

開沼 同じようなことを聞いてしまいますが、AV女優ほどのスティグマを負わない成功の仕方、あるいは生き方もありますよね。風俗嬢でも、水商売でも、あるいは、学歴や人脈が必要なのかもしれませんが、それ以外の仕事でキャリア・アップするという選択肢もあるなかで、あえてAVの仕事を選ぶ理由は何か。もちろん個々人によると思いますが、さまざまな選択肢が視界に入るなかで、その道を選ぶ理由は何でしょうか。

鈴木 少し本にも書きましたが、AV女優はわかりやすく魅力的な世界だけれども、一部の女子にとっては抵抗がある世界、だからこそ希少性のある世界なんです。そして、一部の女子にとっては、とてもハードルが低いところにある。とくに止めるものがなければ、きっかけさえあれば入って行けるところにあるんですよね。やらない理由がなく、手が届くところにあるので気軽に入れてしまいます。とくに、東京の都心にいればなおさらですね。

 個々人のきっかけ自体は多様だし、それほどおもしろくないと思います。来月までにまとまったお金が必要だった、スカウトが好みだった、とか。そういうときに、こっちがその気になれば、自分が魅力的であればふらっと入れるところにあっただけかなと。新卒採用のように、入るまでの過程がしっかりと制度化されているわけではありません。気軽に入れるものであり、魅力的に見えるものであり、プロダクションからは歓迎して迎え入れてもらえる状況です。

「良い女でいることが仕事」という職業は、若い女性から見ると魅力的だと思います。CAや女子アナウンサーもその一部だと思いますが、たまたま目に入ったものがAV女優だっただけで、心情的にはアナウンサーになりたい気持ちとそこまで変わらないと思いますね。

開沼 外から見えているのと違い、心情的なハードルが低いんですね。

鈴木 それはあると思います。自分がなりたいと思う女性のタイプにも、好みがあります。女の子たちはいつも強かに、どういう女になりたいか、女としての価値をどう見せれば、自分が幸福になれるかを考えていますから。自分には貞淑な感じが似合うと思う人は、例えばCAなのかもしれません。ただ、ロリ顔で巨乳を武器にしたいのであれば、AVの世界ではとても良い女として扱われます。自分がなりたい女性のタイプと目指す業界の相性もあると思いますよ。

開沼 なるほど。

鈴木 それから、矛盾したことをわかったうえで言いますが、CAになるよりは、AV女優のほうが背徳観もあるわけですよね。その背徳観を求めるケースもあると思います。自分の人生にちょっと腐っていたら、おもしろそうで、かつ軽めの逸脱をさせてくれるところを求めてしまう。かわいいままで、東京にいるままで、自分の家族との縁もそのままで、ちょっとしたトリップをさせてくれるという希望がある子もいると思います。ない子には、まったくありませんけどね。

※対談収録は2014年8月13日に行われた。発言内容は当時のままを残している。

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