ソフトバンクの2015年3月期第2四半期決算で、同社ががこれまでに投資してきた案件の成果を誇らしげに話す孫正義社長 Photo:DOL

空前の好決算は
投資会社としての成功の証

 11月4日、ソフトバンクが発表した2015年3月期第2四半期の決算(IFRS基準)は、売上高4兆1043億円、EBITDA(償却前営業利益)1兆1226億円、営業利益5966億円、当期純利益が5607億円と過去最高の好決算となった。

 今四半期の決算が好調だったのは、ご存じのとおり同社が筆頭株主である中国企業アリババが9月19日に米国ニューヨーク証券取引所に新規上場(IPO)したため、その持分変動利益5631億円が上乗せされたことによる。第2四半期決算とはいえ、売上高が前年同期比58%増、EBITDA同34%増という伸びは、売上高8兆円の大企業としては異例中の異例だ。

 ソフトバンクは、昨年すでに買収した米国の通信第3位スプリントに続き、今年は第4位のTモバイルUSを買収して、業界1位のベライゾン・ワイヤレス、2位のAT&Tに匹敵する顧客規模の獲得を狙っていた。しかし米国政府による反対意見の表明により、断念せざるを得ない状況となった。

 3兆円規模という買収案件が流れ、一方でアリババのIPOで巨額の含み益を手にしたソフトバンクが次にどんな企業を買収するのか。その規模は? など、世界中の経済界、金融界から注目を集めている。

通信事業は投資事業のための
重要なキャッシュマシーン

 ソフトバンクは現在、東証の33業種分類では「情報・通信業」に属している。実際にNTTドコモ、KDDIと相並ぶ国内通信3社の一角を占める。孫社長は決算発表の場でも「つながりやすさ、通信速度では2社を上回る。スマートフォンの時代がくると予想し、スマホに最適化するための設備投資に大きな資金を入れてきた結果だ」と胸を張る。設備投資はピークを越え、今後は千億円単位でキャッシュフローに余裕が出てくるという。

 同時に米国市場ではスプリントの建て直しに本格的に着手した。マルセロ新社長が8月に就任。「短期の顧客を増やすこれまでの方針をあらため、いったん営業利益を落としてでも長期的に優良な顧客を獲得するために営業費用を積み増した」(孫社長)。そのため今期は、スプリントの予想営業利益を1000億円下方修正し、ソフトバンクの今期予想営業利益も1000億円減の9000億円に下方修正した。

 Tモバイル買収は不調に終わったが、こうした日米の通信事業の取り組みを見ると、世界一のインターネット企業を目指すソフトバンクは、まずは「通信で世界一」を狙っているようにも見える。

 しかしその見方は間違いだというのが、通信やIT業界に詳しいSMBC日興証券の菊池悟・株式調査部シニアアナリストだ。

「ソフトバンクという企業は、現在は通信会社いう“顔”をしていますが、本質はIT関連の『投資会社』です。通信事業による安定したキャッシュを、次の投資にあてることでグループ全体の成長を狙っています。今後通信事業をグローバルに拡大していこうとは、考えていないでしょう」