自分のキャラを立たせるには?
矢野 前回、元リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さんとお話をして、「リッツもNHKも予定調和の美がある」という点が一致したのですが、今回はちょっと違う展開になってきました。興味深いです。
和田 リッツ・カールトンにしてもNHKにしても、元々の「名前の力」があるんです。そしてイメージと期待値も理想もある。しかし、個人になると、会社の看板も名前もない。しょせん、リッツ・カールトンにもNHKにもかなわない。だからこそ、「斬新」であるべきです。予定調和を崩すというよりも、予定調和を超える何かを打ち出していかないとダメなのです。ちょっと勇気がいるかもしれませんが、「同じ」であるより「唯一」になるほうが選んでもらえます。もちろん、相手を尊敬して尊重するという心のベースがあってこその「遠慮のなさ」なんですけど。ところで、私、もともと関西人なので、今年4月からおもいきって関西弁を使うようにしました。いままで標準語だったのですが、あえて「標準語」の丁寧な武装を捨ててみようと。
矢野 出身地の言葉って大事ですよね。東京で生活していると、どうしても標準語を使うようになるのですが、方言をネガティブなものとして考えず、自分のキャラとして使えばいいのですね。しかし、和田さんはこれまで標準語で話していたわけですよね。いきなり関西弁に切り替えられて、周りの方の評判はいかがですか。
和田 はい、今まで標準語で会話してきた方は最初、「えええっ」という感じでびっくりされる人が多かったですが、30分もすると慣れてしまうみたいですね。私は関西のリズムを標準語に直して使っていたので、ときどき「きつく」なってしまうんです。そこで関西弁を復活させてみたら、「それは違うよ」が「それちゃうよ」になる。「ダメです」が「あかんわ」になる。そういう言葉のほうがより人と近くなれました。もともと関西人なので、自分も関西弁を話しているほうが自分らしいなとようやく気づきました。
和田式「初対面を制する」方法
矢野 和田さんが初対面で心掛けていることは何ですか?
和田 はい、営業の世界は「拒絶」から始まりますよね。それは「買わされるんじゃないか」という警戒から生まれた行動です。だから、私はあえて「ゆるキャラ」を意識しています。「ゆるキャラ」とは、「この人、思ったより普通だな」「あまりキチキチしてないな」と思われるくらいがいいということ。営業では「この人には断っても大丈夫そうだ」と思ってもらうことがポイントなんです。あとは聞き上手に徹して、「今日はこんなこと話すつもりなかったのに、しゃべっちゃった」と思ってもらうようにしています。相手の立場になって聞き上手を意識していると、「そこツボ」という箇所を見つけることができ、どんどん相手が楽しくなり、また会いたいという印象を醸し出すことができるのです。
矢野 そうは言うものの難しくないですか?
和田 全然難しくないです。意外に誰でもできるんです。そのためには、気負いながらこれは絶対伝えようとか、変えようとか、売ろうとかしないことです。そして、売れている人の姿勢、表情、手の動き方を徹底的にマネするのです。また、相手がいると仮定して、自分の姿をビデオ撮影してみるのも効果的です。その際、その場ですぐ見ないことがコツ。あえて1週間くらい経って見るのです。1週間経つと頭が冷静になりますから、自分に言い訳ができません。すると、多くの気づきがあるのです。それくらいの練習ができれば人はすぐに変われるんです。
矢野 そんな「和田式」があったんですね! 私もクライアントさんに自分のスピーチをしているところをビデオ撮影するよう勧めています。改めて自分で見ると、「こんなクセがあったのか!」と初めて気づくことも多いものです。なかには現実を認めたくなくて、ビデオを見ても、「これ俺じゃない!」となかなか納得しない方もいます(笑)。ビデオで他者目線を知ることは、すごく効果が高い方法です。