欠点を個性に変える方法
矢野 誰でも欠点を持っていると思いますが、それを転じて個性にすることが、自分を印象づけるうえでは大事ですね。
和田 みんな、同じになったら面白くないですものね。ロボットみたいで。
矢野 欠点をプラスに変えられると、なかなか面白い個性ができあがりますよね。逆に「欠点がまったくない」という表現をしている人は、周りの反感を買う恐れがあるので要注意です。
和田 でも、欠点がまったくない人はいますか?
矢野 それがたまにいらっしゃるんですよ。私がスピーチのコンサルティングをしている経営者の例です。現在40代で、ビジネスの最前線で活躍しています。これまでの人生で、手痛い失敗経験が一度もないそうです。ルックスもいいし、高学歴。当然、収入も世間並み以上のものがあって、奥様と子どもが2人。幸せな家庭を築いている。ただ、あまりにもできすぎていて、部下や周りの方の反感を買ってしまうようです。
和田 反感!(笑)。それがすでに欠点ですよね。たぶんそういう人って、人の気持ち、とくに弱い人の心ががなかなかわからないのです。でも、私も含めて大概の人は欠点だらけですから、それをうまく個性に変えていければ、愛すべきキャラになれるかもしれません。
「声」で愛されキャラになった山瀬まみ
矢野 たとえば、タレントの山瀬まみさんは、ご自身の欠点をうまく個性にして、キャラを立たせていらっしゃると私は思っています。
和田 しゃべり方ですか?
矢野 はい。その中でも「声」ですね。彼女は鼻にかかった声をしていますよね。いわゆる「鼻声」。あの声で長く話すと、聞き取りにくく、話の内容がわからなくなってしまいます。だから、山瀬まみさんの話は一文、一文がとても短い。そうすることで、鼻声という欠点を個性に変えているのだと私は分析しています。これを、「あなたは鼻声だから正しく直しましょう」と一律の正しい型に修正してしまうと、まったく個性がなくなってしまいます。山瀬まみさんではない別人になってしまう。私がコンサルティングをするときは、欠点を個性に変えるような工夫をしています。
和田 自分の欠点ばかりを見て自信を失うのではなく、それを個性に変えて自己肯定感を高めていけば、自信が生まれて、ビジネスもうまくいきますね。自分に自信を持っている人を見ていると、とにかく決断が早い。失敗してもチャレンジをし続けます。これが長年の蓄積で、ビジネス現場などで大きな差として表れてきます。入社時は同じ新入社員なのに、定年になったとき、役員にまでのぼりつめた人と、平社員のままでいる人とに分かれる。その違いは何か。そこをよく考えることが大事だと思います。(つづく)
次回【後篇】をお楽しみに。
矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント。信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。
NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績を持つ。大学院では、心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。
現在は、国立大学の教員としてスピーチ研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職、ビジネスパーソン、学生などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
相手に与える印象の分析・改善力に定評があり、話し方・表情・動作を総合的に指導。全国から研修・講演依頼があとをたたない。
著書に、ベストセラーとなった『その話し方では軽すぎます!――エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)などがある。
【著者オフィシャルサイト】http://www.authenty.co.jp