ボーイング777が
大ヒットとなったわけ

 ここで公的機関である航空局の力が、航空機のグローバル競争力に直結した事例を一つ紹介しよう。ボーイング777型機の事例である。

 かつて、太平洋や大西洋など海上を長距離飛行することを想定している航空機については、エンジンが故障しても空港がある場所まで飛行できるよう4つのエンジンを搭載していることが規則となっていた。実際、長年国際線で使われてきたボーイング747型機(愛称、ジャンボ)には4つのエンジンが搭載されている。

 当時、長距離路線の航空機においてボーイングの牙城を切り崩すことを狙っていたエアバスは、当然のように4つのエンジンを搭載し、A340という新しい機材でボーイングのシェアを奪おうと試みた。しかし、そのエアバスの狙いは見事に打ち砕かれた。

 なぜならば、ボーイングは777型機において、整備コストが圧倒的に低い、エンジン2機だけでも安全に太平洋や大西洋を航行することができることを証明し、規制緩和を実現したからである。その結果、商品としての魅力を失ったA340はエアバス社の業績に大打撃を与え、逆にボーイングは777の爆発的なヒットで大成功を収めた。

 当然ながら、777の長距離飛行を最初に認めたのは米国の公的機関であるFAAであり、逆にFAAが認めなければボーイングが大成功を収めることは難しかったであろう。

市場に任せれば良い
という主張は間違い

 市場原理主義者は政府の関与を極力縮小して、市場に任せるべきだと主張する。市場に任せるほど、産業競争力は高まると言わんばかりである。

 しかし、筆者はその考え方には賛同できない。

 航空機産業でその考えが当てはまらないことは前述のとおりである。しかし、公的機関の役割が企業や産業の競争力に寄与しているケースは、何も航空機産業に閉じたことではない。

 ディズニーのキャラクターの著作権が切れそうになったことを踏まえ、著作権を延長すべく米国の著作権法が改正された事例、自動運転の技術革新のために米国のネバダ州などで公道走行試験が許可された事例、フランスが自国製のワイン、チーズの輸出競争力を高めるために導入している認証制度、サムスンなど自国の大企業が世界で勝てるよう法人税を大幅に減税したり、大統領がセールスマンとなって原発や火力発電所の海外への売り込みを行ったりしている韓国政府の取り組みなど、事例は数えきれないほどある。