先週から円一段安になっています。この原因は、円の「安全資産神話」が崩れたということだと思います。
2・17「中川ショック」と
円の「安全神話」崩壊
92円を越えて円安・ドル高が加速を始めたのは2月17日のことです。この日は中川財務相が辞任を表明した日です。では、中川財務相辞任で円の「安全神話」が崩れたということでしょうか。
そんな単純なことがあるかと思うかもしれませんが、実際にそのような動きとなっています。最近、プロの間で注目されている指標の1つに、日本国債のCDSスプレッドというものがあります。これをみる限り、確かに2・17「中川ショック」と同じタイミングで、円の「安全神話」は崩壊したのです。
日本国債のCDSスプレッドは、2月17日にそれまでの80ポイント程度から一気に120ポイントへ急拡大しました。それまで比較的安定していた日本への信頼が大きく崩れたことをこの指標は示していたのです。
為替市場では、それまで円がかなり「買われ過ぎ」になっていました。ヘッジファンドなどの売買を示している統計、シカゴIMM統計によると、円の買い持ちは2月にかけて5万枚を越え、ここ数年来の最大規模まで拡大していました。
では、なぜ円が「買われ過ぎ」になっていたかといえば、世界的な金融・経済危機でリスク回避機運が広がる中で、「安全資産」として買いを集めてきたとの解説がありました。そうであれば、「安全神話」崩壊で円の「買われ過ぎ」修正が広がり、円一段安になったというのはとても理解しやすいことでしょう。
なぜ「株安=円高」では
なくなったのか?
ところで、それまで株と円の間には「株安=円高」のような関係が続いていました。それもちょうど先週あたりから明らかに崩れ、世界的な株安が続く中でも円一段安となったわけですが、その理由もこれまで見てきたことから推測できるのではないでしょうか。
つまり、「株安=円高」となっていたのはリスク回避で「安全資産」の円が買われた結果と理解されていました。ところが、その円の「安全神話」が崩れたわけですから、リスク回避が「株安=円安」という結果につながったということです。
こんな具合に、円の「安全神話」崩壊ということを考えると、この間の円安も、株安との関係が変化していることも、とてもスッキリ頭に入ってくると思います。ただ、あえていえば、その「神話」崩壊が、結果的に「中川ショック」で起こった形になっていることにはちょっと違和感があるかもしれません。
何も違和感がない、とても素直な反応ではないかと思う方もいるかもしれませんが、私からすると、あまりに素直過ぎるところへむしろ違和感を覚えるのです。というのも政治不信が「安全神話」を揺るがし、円売りになるということは必ずしもあることではないからです。