
BIS年次報告書の警告
同期性高まる世界の国債
6月末公表の国際決済銀行(BIS)の年次報告書は、金融危機以降の国際金融市場で起きている二つの構造変化によって、グローバル金融危機に発展しかねない脆弱性が国債市場で高まっていることを示した。
大きな変化の一つは、金融仲介の中心が民間向け与信から政府向け与信へシフトしていることだ。国債発行の増加ペースは、民間向け与信の伸びを大きく上回り続けている。
もう一つの変化は、クロスボーダー与信の主役が銀行から銀行以外の資産運用業者(年金基金、保険、ヘッジファンド等)へシフトしていることだ。
一方で国際金融市場の統合は、こうした変化の下でも一段と進み、各国における金利などの金融環境の変化が他国に一段と伝播し易くなっている。
伝播の主なチャネルは、為替スワップを駆使して急拡大しているヘッジファンドなどによる国境を越えた国債投資だ。欧米主要国の財政政策は、軍事費に限らず拡張方向へ一段と舵を切り、経済活動における財政の役割が高まる「財政の時代」が今後さらに本格化する。
そうした中で、各国の国債市場の不安定化を契機に、グローバル金融市場が動揺するリスクが高まっていく。