ダイヤモンド社刊 1800円(税別) |
「乗っ取りを招いたものは、仕事と成果について明確な定義と責任をもたないマネジメントの凡庸な仕事ぶりだった」(『チェンジ・リーダーの条件』)
1980年代、米国の経営者は「ステークホルダー(関係当事者)のための経営」と称して、プロとしての仕事をしていなかった。そこで乗っ取りブームが起きた。
企業の成功は、知識労働者のやる気、努力、忠誠にかかっている。だが、長年勤めた企業の乗っ取りと解体は、彼らへの裏切り以外の何物でもなかった。そこで今度は「シェアホルダー(株主)のための経営」が言われ出した。
しかし株主の利益とは、せいぜい半年以内の株価のことである。そのような資本利得は、株主にとっても誤った目標だった。
株式売却できない保有者にとっては、短期の資本利得は利益ではない。彼らが必要としていたものが、経営責任の制度化だった。
まもなく今日の財務監査に似た事業監査が一般化する。3年に一度で十分だろうが、事業目的、経営戦略、マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成、社会的責任について監査が要求されるようになる。
「主な年金基金は、事業監査を受けない企業の株式や社債には投資しなくなる。企業のマネジメントは抵抗するだろう。だが彼らは、つい60年前も、外部の会計士による財務監査とその公表について、憤慨して抵抗していた」(『チェンジ・リーダーの条件』)