「週刊ダイヤモンド」1月10日号の巻頭特集は、「今年こそ!お金を学ぶ 賢く 貯める 殖やす 備える 使う」です。特集冒頭に掲載された、強烈に面白い対談から一部を抜粋してお送りします。手持ちの現金以外、ほぼ全てを新しいビジネスモデルへの投資に回しているという堀江貴文氏と、投資家として20年以上、お金について考え続けてきた藤野英人氏が、お金の本質をズバリ語る。

 

特別対談
僕らが考える、おカネの本質

藤野英人
投資家、ファンドマネジャー

堀江貴文
ライブドア元CEO、SNSファウンダー

──今日は、お金に対するお二人の考え方をお伺いしたく……。


堀江 お金に対する考え方っていうものが、そもそもないんだよね。そんなに考えてないし(笑)。だいたい、「お金に困る」っていうんだけど、そうやってお金というものにとらわれてること自体、いわば洗脳されてるってことだから。

藤野 そうそう。実は日本人って知らずしらずのうちに、ものすごくお金が大好き。あいつは金の亡者だとか、金持ち批判だとか、あるいは格差だ!って叫ぶのも、全てお金の話。そういう批判をしている人こそ、お金のことばかり考えているわけです。皆、いつもお金のことで頭がいっぱい。

堀江 みんな割と感情で動いてますよね。政治家って、そういう国民の感情をすごく大事にしてるんですよ。こういった、ふわっとした民意を利用して。でも「こうなるべき」っていう思想はなくて。

藤野 お金がそんなに好きなら正直にその気持ちに向き合って、まずはお金持ちになろうよ、と思いますね。そうすれば、お金をどうやって得たらよいのか、お金や経済の仕組みはどうなっているのか、そういう基本的なことをまず知ろうってことになるはず。

 そこを放棄しながら、お金が欲しい、でも努力はしないというようなことだと、「お金がない→格差批判」……という負のスパイラルだけが残る。結局、そういう感情的な批判を利用しようとする政治家や扇動家に、知らないうちに消費されるだけなんです。

ソフトバンクと
ドコモのCMに見る
人々の「普通願望」

堀江 でも現実には、みんな洗脳されちゃってることなので、解決は難しいですよね。やっぱり普通の暮らしをしなきゃとか、周りと合わせなきゃっていう強迫観念が根付いてる。これはもう小学校の教育がそうなってるんで、恐らくそこに帰着していて。

 日本の場合は明治以来、国家のための国民、つまり兵隊を養成するための教育をしていて、等しく平等に国を守る義務があると。兵隊っていうのは皆と同じ行動を取るのが基本なので、人と違うことをしちゃダメ。いまだに学校でそう教えてるから。

 だから、社会人になったらスーツをビシッと着て、ネクタイ締めて、結婚して子供を2人くらいつくって、家と車を買って、子供たちを食べさせていかなければいけない、みたいな強迫観念にとらわれてしまう。それをやるためにはお金に困らないように……となるし、これをやってないやつは落ちこぼれだ、みたいな。

藤野 実はお金の話は全て、「僕らがどう生きるか」「どう生きたいか」という話が裏にある。格差の話も、何が幸せかって話ですよね。本来は、幸せの形っていろいろあって、お金があったら幸せかというと、必ずしもそうじゃない。

 NTTドコモとソフトバンクのCMを比較して見ると面白くて。ドコモの「ドコモダケ」の家族って、おじいさんとおばあさんと、お父さんお母さんも日本人で、子供がいて、全員五体満足で、全員普通。そこに何の疑問もないのは、これが普通なのか?っていうことに対する疑いが何もなかったんだと思うんですね。でも実際には、日本人同士じゃない夫婦もあれば、親が1人のこともあるし、子供がいない家庭だってある。

 一方ですごいなと思ったのは、ソフトバンクの「白戸家」のCM。お父さんが犬で、お兄さんは黒人で、イルカの親戚もいる。あれは孫(正義・ソフトバンク社長)さんの在日韓国人という出生も多分あって、「家族とは何か」「普通とは何か」っていう考えがあったんじゃないか。家族の形っていろいろあっていいでしょう?ってことだと思うから。

堀江 それは面白い視点ですね。