原油価格の急落で、国内外の石油業界に激震が走っている。資源メジャー各社は新規投資を抑制し、下流の販売部門をリストラ。国内では、再編の動きが本格化してきた。出光興産による昭和シェル石油の買収話からは、コスモ・東燃を巻き込み、JX・出光の2強に集約していく姿が浮かび上がる。

都内の出光(右)、昭和シェル(左)のガソリンスタンド。買収のシナリオによっては今後シェルの看板は見られなくなるかもしれない
Photo by Maya Wakita

 2014年12月20日、土曜日の昼下がりのこと。関西近郊のある昭和シェル石油系列のガソリンスタンド(GS)の店長は、週末にはまずかかってこない、支社の営業担当者からの電話を受けた。

「私たちは出光の“子会社”になる方向だと聞いています。ただ、これからも特約店さま第一であることに変わりはありませんし、シェルはシェルとして続けていきますので、心配は要りません」

 担当者の声は動揺を隠せない様子だったと店長は話す。その日、こうした買収の“通達”が、電話やFAXを通じて全国の特約店1店舗ずつに、丁寧に伝えられた。

 石油元売り業界2位の出光興産が、5位の昭和シェルの買収に乗り出した──。そのニュースが一斉に伝わったのがこの週末だった。本稿執筆時(12月24日時点)ではまだ両社の正式発表はないが、14年度中にも基本合意し、出光が昭和シェル株のTOB(株式公開買い付け)を実施する見通しで、買収総額は5000億円以上にも上るとみられている。

 さらに、買収は昭和シェル1社にとどまらないとの見方もある。これをきっかけに、再編のうねりが他の元売りにも波及するのは間違いなく、業界最大手のJX日鉱日石エネルギーや、シェアでは見劣りする東燃ゼネラル石油やコスモ石油の次なる一手が注目となっている。業界再編の火ぶたが切られたわけだ。