他に原油下落の原因としては、原油生産の量の約3割を持つOPECが減産しなかったこと、中国をはじめとする新興国の成長率が下落したために需要が低下したこと、さらには投資マネーが引き上げたこと等もあります。もちろん、産油国や資源国の経済悪化による金融市場の不安定化には注意が必要です。

 注意すべきは、シェールオイルの増産による原油価格の下落は、米国が国家戦略として仕掛けている可能性があることです。現在、原油価格の下落で苦しんでいる国はロシア・イラン・ベネズエラなどの産油国で、米国と対立している国々であることも憶測を強めています。最近の米国とキューバの接近も、キューバに援助をしていたのがベネズエラであることも関係が深いともいわれています。

米国の量的緩和は正常化へ
自己管理を基本とする金融政策

 景気拡大の一方で注目したいのは、米国が特に経済政策面で“自己管理”できる能力を持っていることです。そもそも予算(財政赤字)に箍(たが)を嵌めています。「米債務上限法」で「債務上限」を決めているのです。一時「財政の崖」として予算案を通すことが難航し、政府閉鎖(公的行政が業務不能)に陥る可能性がありました。最近でも12月初旬まで、暫定予算案が審査されていました。

 しかし、この強制的に財政赤字に上限を“法律で”決めていることはある意味よいことではないかと私は考えます。米国には財政が健全でなくなると、金融市場が不安定化し経済危機・金融危機の引き金となるという考え方もあります。

 米国の政府総債務残高(対GDP比:2013年)は、約100%でした。米国のような債務制限の法律を持たない日本は、この10年で財政赤字の累計が約4割も増え、政府債務残高のGDP比は約240%となっています。

 米国も日本も、金融政策では「量的金融緩和」を行っています。米国はマネーの量が約5倍に膨れ上がっており、GDP対比でみると約2割にもなっています(日本はGDPの約7割)。先日、米連邦準備理事会(FRB)の内部セミナーに特別に参加し、議論に加わりました。その議論によれば、10月末で量的緩和は終了しましたが、マネーの縮小については、保有している国債等の資産の売却はせず、期日落ちを待つのが基本方針で、2020年には現在のマネーの半分にまで自然に減少させるとのことでした。

 金利の引き上げについては、ジャネット・イエレンFRB議長のコメントの一字一句の表現が注目され「イエレン文学」とまで揶揄されています。現在のところは先日の記者会見の内容から、今年の4月以降ということになっていますが、経済指標等によってはさらに早まる可能性もあります。

 彼らの一連の対応で、特に筆者が評価しているのは、このような量的金融緩和からの脱却を「正常化(normalisation)」といっていることです。早期に正常な状況に戻そうとしています。つまり、米国は財政政策にしても、金融政策にしても、自分で管理し、正常化しようとすることができるのです。