学生は企業のことを驚くほど知らない。筆者の経験によれば、東証1部上場企業のリストのうち、学生が知っていた企業名は、せいぜい10%程度だったという。ここにも企業と学生との間には、すれ違いがあるように見える。では、よい採用のために、企業は何をすればいいのだろうか。

君たちは
本当に「大企業志向?」

 3年前まで関西大学で「学部学生のための会社学」という講座を受け持っていた。授業の合間に、就活生からときどき質問を受けたりアドバイスを求められることがあった。

 K君は、3年生の夏休み前に、インターンシップのことで相談に来た。大企業か、ベンチャー系企業のどちらにエントリーすればいいだろうかという話だった。

 K君は、「給与水準が高い」「福利厚生が整っている」「潰れる心配がない」など大企業のメリットを並べ立てたうえで、でも自分を活かせるのは、コンサル関係やベンチャー的な会社ではないかと熱く語っていた。

 その時に、K君が語る「大企業」と私が思う「大企業」との間には、多少のズレがあるように感じた。そこで、まず学生がどの程度企業を知っているかを実際に確認してみた。

 そもそも「大企業とは何か」という議論があるだろうが、私は、とりあえず東京証券取引所の一部上場企業を対象にした。

 日本経済新聞の株式欄にある東証一部上場企業のページをコピーして学生に渡した。そして約1700社のうちで「企業名を知っている」「大略どんな事業をしているかが分かる」の二つの要件を満たす会社をラインマーカーで印をつけてもらった。