景気の好転、企業収益の回復基調にあって、企業の採用意欲が復活している。新卒採用は、学生側からすると「就職難」から一転、「売り手市場」化した観もある。それだけに、大企業の秋採用開始を控えた今、内定者の囲い込みは、人事部門、採用担当にとっては例年にも増して重要な課題となっている。

本連載では、内定者フォローの意義と、その手法について、解説する。

「内定をもらっても
就活を続けていました」

 内定者フォローの役割と機能について、今回は「内定者=学生」の視点で考えてみます。

 先日、情報系企業A社の新入社員に集まってもらい、内定者フォローについて話を聞きました。つまり、1年前の内定期間を振り返り、A社における内定者フォローについて評価してもらったのです。

 A社は独自の技術を持つ、社員数約100人の中堅企業。今春の採用数は8名で、そのうち5人が集まってくれました。

 内定者フォローの話を聞く前に、それぞれの就活について聞きました。5人に共通していたのは、A社が第一志望ではなかった、ということです。

 そして、5人のうち4人までが、A社から内定をもらった後も、就活を続けたそうです。

ヤマダくん
 「出版、損保、地銀を受けました。この会社から内定をもらったのは6月ですが、夏まで就活を続けました」

ミウラさん
 「デベロッパーを中心に受けていましたが、なかなか決まらず7月になりました。だんだん疲れてきて、志望職種を広げ、最初に決まったのがA社でした」

サトウくん
 「A社から内定をもらった後も、迷っていました。ここで働こうという覚悟が決まったのは、12月ぐらいでした」

 いま5人はA社で生き生きと仕事をしています。入社から半年近く経ち、それぞれ先輩のアドバイスを受けながら、1人で営業訪問をするなど、がんばっています。組織になじむことができている、ということでも共通しているようです。