業界史上最年少上場を記録したベンチャー企業の経営破綻、そして起業家としての再生を描いた『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書にも登場する経営者たちと語り合う必読のシリーズ企画。第5回は同世代の起業家として公私ともに親しい『ドリコム』のCEOである内藤裕紀氏の登場だ。(構成・寄本好則 写真・寺川真嗣)

この本の「凄み」を理解するには
読む人に「器」が必要だ。

内藤 僕も読ませていただきましたが、この本、反響すごいですね。知り合いの経営者たちが、こぞってブログやフェイスブックに感想を書き込んでました。

杉本 ありがとうございます。僕は思うところあってフェイスブックはやってないんですけど、いろんな方のブログは読ませていただいたし、ラインで激励の言葉をいただいたりしましたよ。

編集部 ただ、よくある経営本というか、マニュアル本として読もうとした読者の方からは「参考にならない」といった厳しい意見もあります(笑)。

杉本 そうなんですよね。アマゾンのレビューでも、星5つのお褒めの言葉と、星ひとつの厳しい評価が混在している感じで両極端。「ただの自慢話じゃないか」といったお叱りもいただきました。

内藤裕紀(ないとう・ゆうき)[株式会社ドリコム代表取締役社長]
1978年生まれ。京都大学在学中の2001年に有限会社ドリコムを設立し、代表取締役に就任。インターネットサービスの提供を主軸に事業を展開。2006年に東証マザーズ上場を果たす。

内藤 だって、400億円借金してから再起するって、普通の人にとってはマニュアルにならないですもんね。自分自身に経営者感覚がない人が読んでも、なかなか共感できないでしょう。
 ある意味で、読む側の「器」が求められる本なんだと感じます。僕としては『30歳で400億~』にはすごく共感できましたよ。

杉本 ありがとうございます。

内藤 とくに、地獄に転落したあたりのエピソードは、同じ時期に僕もちょうど大変だったこともあって、身につまされる思いで読みました。あの当時は、ふたりで会っても傷の舐め合いになるからって、ほとんど飲みにも行かなかったですもんね。

杉本 当時のドリコムは、楽天からの出資を受けて窮地を脱したんでしたよね。

内藤 そうですね。なんとか乗り越えることができたけど、ぎりぎりの綱渡りではありました。