次のカーブがわかっていれば
クラッシュを避けられる。

編集部 経営者として失敗を経験したことで、明らかに変化するようなポイントはありますか?

内藤 イメージですけど、自動車レースでコース(道)を覚えているかどうかに近いですね。一度走ったことがある道なら、次はどんなカーブが来るかわかります。
 時速200kmで飛ばしている時に急なヘアピンカーブが来るとクラッシュしてしまう。でも、道を覚えていれば「ここは減速だ」と判断できます。

編集部 なるほど。わかりやすい喩えですね。やはり、そういう嗅覚というか、感覚的な部分が大切なんですね。

杉本 いや、ある意味でとてもロジカルな判断力でもありますよ。BSやPLの数字を見てアクセルを踏むべきかどうかの判断をするんですから。失敗を経験することで自分の中にデータベースが積み重なって、判断するための引き出しが増えるイメージです。

内藤 あと、上場が目前になったり事業が成長していくと、雪だるまが転がるようにスピードが上がっていくんです。走り続けなきゃいけない強迫観念のようなものも湧いてくるし。
 「これ以上スピードを出すと自分でコントロールできなくなるぞ」という限界は、一度経験することでわかるようになりますね。

杉本 まったくその通りだと思います。ただ、こんな話していると、僕らがなんだか「おっさん」になってしまったみたいだね。

内藤 20代の頃は、僕らが「おっさん」からいろんな話をされて「ああ、そうですね」っていう顔をしながら「俺は違う」とか思ってたけど(笑)。僕らもいつの間にか経験を積み上げてきちゃったっていうことか。

杉本 そういう意味では、この『30歳で400億~』は、自分でブレーキが利かなくなる、コントロールの限界を疑似体験していただける本でもあるのかな。

起業家対談シリーズ第4回 内藤裕紀<br />自分にブレーキが利かなくなる時がある