首脳会談に踏み切らせた要因

 首脳会談実現の背景について、日本のメディアや論者による冷徹な分析と論評が数多く発表されたものの、「中国が首脳会談に応じた背景には、2014年の日本の中国への投資が前年比4割も減少し、中国の経済状況を悪化させたため、日本からの投資を呼び戻そうとした要因がある」といった論調も目立った。従って、日本の対中投資の状況について触れておく必要がある。日本は最も早く中国の改革開放のプロセスに参加し、ODA、投資等の中日経済協力が、中国の現代化に貢献したことは高く評価する。

 とりもなおさず、日本を含む海外からの投資は、中国経済の持続的な発展には必要である。表2と図1は、2014年10月に発表された中国商務部の『中国外資統計 STATISTICS ON FDI IN CHINA 2014』の統計に基づき、筆者が再作成したものであり、1993年から2013年までの日本による中国への投資状況を如実に示している。

 筆者が算出したところ、この21年間、海外から中国への投資総額のうち日本が占める平均シェアは6.8%であり、年平均投資額は43億ドルである。2008年から2013年までの6年間の平均シェアは4.7%であり、年平均投資額は51億ドルである。そして、2013年、中国への海外直接投資総額が1239.1億ドルであったのに対し、日本の中国への投資は70.6億ドル、前年比微減程度であった。中国商務部の最新統計によれば、2014年の中国への海外直接投資総額は1195.6億ドルであった。急激な円安、人件費上昇のため、日本からの投資は43.3憶ドルで、確かに前年比38.8%減となった(占めるシェアは3.6%)。しかし、中国の経済状況を悪化させたとは、とても言えない。従って、前掲の議論は明らかに的を射ていないのである(表2、図1)。

 習主席が安倍首相との会談に踏み切った背景には、(1)中日関係の長期的で安定かつ健全な発展は、両国の根本的な利益に合致していること、(2)4項目の合意を達したこと、(3)APECホスト国としての義務を果たさなければなければならないこと、という3つの要因があろうかと思われる。