「負け癖チーム」に自信を与えた意外な一手
この「負け癖チーム」のリーダーを兼任して、私がまず感じたのは自分の責任でした。悪くなるまで放っておいたのは、各リーダーを束ねるリーダー、すなわち社長の私に問題があるからです。なんとか立て直さなければならないと意を新たにしました。
負け癖のついたチームは、メンバーの個人的なメリットやビジョンについてリーダーが語っても、なかなか信じてくれません。「どうせダメだ」という経験が重なり、聞く耳を持たなくなっているのです。それなのに一方的に熱く語れば、リーダーとメンバーの温度差がますます大きくなり、距離が開きます。メンバーがチャレンジ精神を取り戻すどころか、リーダーの努力のすべてはムダになるでしょう。
「この状況を打開するには、まず何か成功体験がないとダメだな」
私はそう思いましたが、いったん負け癖がついてしまうと、小さな成功体験すら難しい。ましてや売上や利益を立て直すなど、相当に難易度が高そうでした。
悩んだすえ、私がそのチームの最初の課題にしたのは、「時間管理」でした。
「規則正しい生活をし、だらだら残業するのはやめましょう」
相当に初歩的なものだと思うかもしれません。しかし、これは意外なほど効果がありました。
ちょうど全社的に「残業時間を管理しよう」という取り組みをしていたのですが、他のチームと比べてもこのチームの時間管理はあまりにもできていませんでした。仕事があってもなくてもみんな残っているし、残業記録もちゃんとつけていない。チームの様子を観察した私は、この点から「決められたことをしっかりとやる」という習慣があまりないのだな、と気づきました。せっかくチームで決めたことも、徹底してやる習慣がなければ、全体のパフォーマンスが低くなるのも当然です。
「時間内に仕事を終わらせ、しっかり定時に帰ろう。業務時間は集中し、規則正しく働く。この改善なら最初の1ヵ月でできるだろう」
「今月は残業20時間以内」という目標を設定し、チームメンバー全員に徹底しました。時間通りに帰るのが第一目標というのは売上や利益の達成と比較すると難易度はかなり低く、1ヵ月後に無事に達成。
「おっ、できるじゃん!」と私は大いに成功を喜び、それはメンバーも同じだったのです。
全社的にも時間管理がテーマだったこともあり、「このチームはしっかり時間管理ができている」と取り上げると、メンバーの達成感は倍増しました。
それは、ささやかな成功体験です。しかし、チームメンバーは「なんだ、自分たちはできるじゃないか」と実感できたのです。これは、何よりの収穫でした。肝心の業務や数字の立て直しに取り組みはじめたのは、それからです。
その後立ち直り、その事業部にいたメンバーはその後もうまくいかなくなると、「時間管理は自分たちの得意項目だ」と働き方を見直す、というクセをしばらく続けて、自分たちの勝ちパターンにしていました。
負け癖のついたチームリーダーは、「絶対に勝てる試合」を一生懸命に探し出し、とにかくまず1勝する。そこからがスタートになります。このとき私が見つけた「時間管理」は、簡単でありながら大切な「はじめの一歩」となる“効果的な勝ち試合〞だったのです。
{負け癖チームの立て直し}に効くレシピ
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