今回は人の成長と転職の話です。
“若手社員の突然の退職に社長が激怒した”というハナシが昨年ネットを賑わせていました。実は私も最近、手塩にかけて育てた若手の部下が突如、転職の報告をしてきた時には、やはり激怒してしまいました。私自身も15年前、前回お話ししたようなチャンスをいただいた三菱商事を、入社から3年も経たずに辞めてしまったにもかかわらずです。
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転職の理由には、家庭や個人の事情や、本当にギブアップ、といった致し方ないものや、どうしても起業したい、または新たな役割に挑戦したいといった場合など、誰もが理解できるようなケースもあります。しかし時として、事業領域や職種を変えたいから、とかキャリアアップのため、というような、漠然とした理由で転職する人もいます。
今いる会社の中に本当にそういうチャンスはないのでしょうか。一度でもトライしたのか。給料が上がるから、といっても、月の手取りにすれば大した差ではないでしょう。今の会社で培ってきた実績や信用、人間関係、そういったものを捨てるほどの価値がそこに本当にあるのか。実は「逃げ」ではないのか。
今の会社の中に解があるかもしれないにもかかわらず、それを突き詰めずに、耳当たりの良い理由を作って転職を選んでしまうとしたら、それはあまり良くないな、と自戒の念も含めて思っています(逆に正直に、どうしても目先の収入アップを取りに行きたいから、能力的にギブアップなんです、とか言った方がまだ潔いですね)。
辞めると言ってきた部下には、もちろんこうしたことも問いただしましたが、決心は固く、翻意することはありませんでした。その後、彼の言葉がある気づきを与えてくれ、最終的には私も納得の上で彼を送りだすことができました。
私自身が三菱商事を辞めた時は、正直彼ほどの覚悟があったわけではありません。しかし、送り出していただいた時にもらったメッセージには彼の言葉と共通するものがありました。