スキルレベルや向上させたい領域は
参加者自身が一番わかっている

 次に、(9)最後に必ずアンケートの記入が求められる、(10)職制や能力度合により参加者を指名して実施している――、の2点を見ていこう。

 集合研修の最後に、参加者に研修の満足度を問うアンケート記入に協力してもらうことが常である。このことが、研修の内容や運営の改善のために役立つだろうことについて異論はない。では、参加者のモチベーション向上のために、研修満足度を問うアンケートが役立つだろうか。私の答えは否である。研修の準備や運営担当者にとっては役立つが、参加者のモチベーション向上には役立つとは思えない。

 アンケートの代わりに、参加者のモチベーション向上のために役立つ仕掛けはどのようなものであろうか。私は、そのひとつとして、事前スキルチェック、事後スキルチェックを挙げたい。研修の最初に、研修内容の項目毎に、自身のスキルレベルを5段階で自己判断する。そして、研修の最後にも同じ項目で、自身のスキルレベルを自己判断して記入するのだ。

 事前スキルチェックをする際によくある質問が、「5段階のスキルレベルの違いがわからない」というものがある。それに対しては、「どうぞ、ご自身で思った通りに自己判断してください」と回答する。また、「そもそも、はじめて受ける研修なので、項目内容の意味がわからない」というご質問を受けることもある。この場合は、「そうですね。空欄にしておいてくださいね」と答える。

 人事部門や教育部門の方々からは、一生懸命準備されている方であればあるほど、なんといいかげんな対応かとお叱りを受けるかもしれない。しかし、私は、この方式こそがモチベーション向上に役立っていると、10年来、数百回の実施事例をふまえて実感している。

 事前・事後スキルチェック方式は、自身のスキルが上がったかどうかということを、一番わかっているのは、その研修担当者でもなく、人事部でもなく、上司でもなく、他ならぬ自分自身であるという考え方に基づいている。

 研修にとって最も重要な要素は、他の誰でもない、自分自身でスキルが上がったと実感できるかどうかである。言い換えれば、参加者の事後のスキルレベルの自己認識の平均が、事前のそれに対して上がり度合が高ければ高いほど、参加者はスキルの向上を実感できたということになる。逆に上がらなければ、それを実感できなかったということになる。

 ただ、スキルチェックに関して、誤解なきように参加者へ知らせておく必要があるのは、この事前・事後スキルチェックは、参加者の評価に使わないということだ。むしろ、研修担当者の評価に使うべき項目で、私は自身の評価に用いている。