企業における社員の能力開発を推進する役割が、人事部門から、ビジネス部門へ移行している。多くの人事部門が、型にはまった、お仕着せの能力開発しかしないことに、ビジネス部門が業を煮やしているからだ。
「理論と学説ばかりの講釈で、寝てしまった」。大半の社員たちは、企業内トレーニングをつまらないと感じているものだ。問題は、講義の内容にある。「事例は多少あるものの自社のものではないので、ピンとこなかった」「その場では理解したが、実践のビジネス活動に役立たない」――。
こうした状況改善にお役に立てればと昨秋、企業における能力開発手法をご紹介するためのワークショップ開催のご案内したところ、案内日からわずか2日間で、銀行、商社、メーカーなど80社の管理職級100名余の方々から参加の申し込みをいただいた。能力開発に対する高いニーズがあることを、あらためて認識した出来事であった。
しかし、参加者の面々は、こちらの予想とは大きく違っていた。人事担当や人材開発担当といった人事部門関係者の申し込みを想定していたのだが、蓋を開けてみれば、95%は営業部や事業部などビジネス部門の関係者だったのだ。
参加の理由を問うと、「自社の人事部門のプログラムでは業績伸展は見込めないので」という声のほか、「人事部門にまかせておけない」、「能力開発が人事部門からビジネス部門に移管されたので」参加した――などという答えが返ってきた。
「トレーニングは人事部門には頼まない」
ビジネス部門にはびこる人事部不信
本当に人事部門関係者は、能力開発に興味がないのだろうか?国内企業や外資系企業の人事部門の責任者の方々へ、さらに個別にご案内をしてみたが、返ってきたのは、やはり不参加という返事だった。