5月8日、FRB(連邦準備理事会)は、ようやく米国主要金融機関19行のストレステスト(資産査定)の結果を公表した。

 ストレステストとは、金融機関を取り巻く経済環境が予想以上に「悪化=ストレスが発生」した場合、「金融機関が保有する資産からどれだけの損失が発生するか」を計測するテストだ。

 何故今、ストレステストを行なうかといえば、サブプライム問題に端を発した経済状況の悪化によって、「米国の大手金融機関がどれほど体力を低下させているか」を調べるためだ。

 実際には、150人に上る金融のプロが、約2ヵ月かけてそれぞれの銀行の資産内容をすべて克明に調査する。

 テストの結果、対象となった19行のうち9行が合格。つまり、「現在の財務内容ままでも、経済の一段の悪化にも耐えられる体力がある」と認められた。

 一方、残りの10行については、今のままで体力が十分ではない可能性があり、今後資本金を積み増して体力を強化することが求められた。

 この結果は、ほぼ事前の予想通りで、多くの関係者は「テストの結果を見て安心した」と胸を撫で下ろした。資本増強を求められた10行の金融機関についても、「実現可能性の高い資本増強さえ行なえば、今後の業務遂行に支障はない」という一種のお墨付きを、金融当局が与えたからだ。

 それは、結果発表に気をもんでいた多くの市場関係者を安堵させたことは間違いない。それをきっかけにして、株式市場で一時的に金融株が買い戻され、市場全体が堅調な展開を示したことを見ても、明らかだ。

 しかし一方で、その結果に懐疑的な見方が根強くあることも見逃せない。一部の金融専門家からは、「今回のテストの前提となるシナリオが甘すぎる」などの批判が出ている。

 また、「今回のテスト結果は、元々政策当局が市場を安心させるために、“結果ありき”の逆算方式で出したのではないか」などの見方も出ている。

 つまり、今回の結果だけを見て、「これで米国の銀行は大丈夫だ」と結論づけることは、時期尚早だろう。今後の展開を注意深く見守ることが、必要になる。今回は、結果公表時から噴出している「ストレステスト懐疑論」の理由と本質について、考えてみよう。