九州はどの県も一つひとつの県民性がはっきりしている。特に、遠く古代、「熊襲」とか「隼人」とか呼ばれる人びとが住んでいた九州南部は、北部と趣が大きく異なる。しかも、県によって人びとの気質が大きく違うのに、「九州」となるときちんとまとまるからおもしろい。昨今盛んに論議されている道州制も、真っ先に九州から導入してはどうかという意見があるというが、それほど特徴のあるエリアといえる。

 南九州に位置する熊本県の場合、旧国名である肥後の時代から「肥後もっこす」といって、頑固で一徹、一本気の硬骨漢、情にもろく義理堅いところが男性に共通する気質とされてきた。女性も負けてはいない。かつてジャーナリストの大宅壮一は熊本の女性を「猛婦」と評したように、芯の強さ、粘り強さにかけては全国でも1、2を争うといってよい。

 名水百選に県内4ヵ所が選ばれているほどのおいしい水で育っているせいもあってか心が清く、純粋な面も目立つ。過去4半世紀にわたって献血率(献血に協力した人の数を人口で割ったもの)が全国第1位を続けているのは、そうしたことの反映かもしれない。そういえば、日本赤十字社の前身となった博愛社が西南戦争のときに生まれたのもこの県だ。

小細工とは無縁の純真さ

 そうした半面、不器用なところがあるのは否めない。きまじめで純真な熊本県人は、裏技や小細工といったものとは無縁である。また、「オレがオレが」という気持ちが強く、周りの人と協力・連帯するのは得意ではない。

 また、熊本県人はストレート過ぎるもの言いで損をすることが少なくない。しかし、持ち前の明るさがそうしたハンディをカバーし、熊本県人のことを悪く言う人があまりいないのもまた事実である。その意味では、九州のなかでは出色である。

 熊本県人は皆、年を取っても自分の出身高校の校歌を歌えるというが、それは、ともすると個人プレーに走りがちな自分たちへの戒めなのかもしれない。逆に、熊本県人に「高校はどちらですか?」と尋ね、その校歌を歌ってくれるようになれば、信頼関係が築けた間柄といえそうである。


◆熊本県データ◆県庁所在地:熊本市/県知事:蒲島郁夫/人口:181万5224人(H21年)/面積:7406平方キロメートル/農業産出額:3046億円(H19年)/県の木:クスノキ/県の花:リンドウ/県の鳥:ヒバリ


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