──ここは重要なポイントですね。そのような韓国の方にどうアドバイスをされますか?
岸見 親の期待に沿うことがもし必要であるとしても、韓国の人たちが思っているのとはまったく違う実現方法があるわけです。それをご存じなかったのではないでしょうか。受動的に親に従えば親の期待に沿ったことになると考えておられたかもしれませんが、本当はもっと異なるやり方があるのです。それは「あなた自身の幸せな姿」を親に見せることです。
古賀 「親の期待に応えたい」という思いが、「親はこういうことを期待しているはずだ」という勝手な思い込みである可能性もすごく高いと僕は感じています。親子で緊密なコミュニケーションがしっかり取れていれば、親が本当に望んでいることが何かわかるはずです。良い大学に入る、大きな会社に入る、素敵な異性と結婚する、多くの子どもをつくるなどという話ではなく、本当の本当に親が望んでいることは、「子ども自身が幸せになること」であって、そこまで深く掘り下げて考えていけば、何かヒントが見えてくるんじゃないでしょうか。
韓国では
30代の女性が読者の中心
──韓国版の『嫌われる勇気』では、いわさきちひろ風の挿絵を入れるなど、担当編集者が読者ターゲットを30代女性に定めていたといいます。その結果、大きくブレイクしました。日本の場合は、世代的にはあまねく読まれており、男女比もほぼ半々です。この読者層の違いはどのように見ていますか?
岸見 結婚をしないという選択をする若い女性は日本でも増えています。ただ、そういう選択をしたとき、日本の社会ではいまだ抵抗があるのも事実です。韓国は日本以上に家庭を重視するので、30〜40代の女性が結婚をせずに仕事を続けることはもっと大変なのだろうと思います。それゆえそうした世代の女性読者が多いのでしょう。また、仕事を辞めて家庭に入った方も、家事や子育てをすることが、日本の女性以上に犠牲になっているという意識を抱きやすいのかもしれません。