堅調な展開が続く日本の株式市場。日経平均株価は、4月下旬に終値で15年ぶりとなる2万円越えを果たした。背景にはどんな要因があるのか。今後、株価はどこまで上がるのか。株式市場に精通し、独自の視点による切り口に定評がある広木隆・マネックス証券チーフ・ストラテジストに、投資家が気になる足もとの相場の「見極め方」を詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
日経平均の2万円突破は
それほど喜ぶべきことなのか?
――日本の株式市場が好調です。日経平均株価が15年ぶりに2万円を突破したことを、どう評価していますか。
日経平均は4月22日、2000年4月のITバブル以来となる2万円越えを終値で達成しました。ただ、それは世間で言われているほど喜ばしいことなのでしょうか。というのは、日経平均は一番ポピュラーな指標だけれども、相場を動かす力のある投資家がベンチマークにしているのはTOPIX(東証株価指数)であり、日経平均を見ている人はほとんどいないからです。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト。上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなどでファンドマネージャーなどを歴任。長期かつ幅 広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強みがある。2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。テレビ東京「ニュースモーニングサテ ライト」、ラジオNIKKEI等、メディアへの出演も多数。マネックス証券ウェブサイトにて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。著書に、『ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論』(ゲーテビジネス新書)、『9割の負け組から脱出する投資の思考法』(ダイヤモンド社)、『勝てるROE投資術』(日本経済新聞出版社)など。
日経平均は値がさ株の影響を受けやすく、たとえばファーストリテイリングなどが買われると、大きく上昇します。それに対して、東証一部上場企業全体の動きを表すTOPIXを見ると、リーマンショック前の2007年につけた高値より、まだ1割も低いのが現状。日経平均が一時2万円を回復した4月10月には、節目となる1600ポイントも越えられなかった。そのことからも、株式市場全体が15年来の水準に戻ったかと言えば、そうは言い切れないと思うのです。
――TOPIXベースで見ると、日本の株式市場は言われるほど盛り上がっていないということですか。
TOPIXの高値は2007年2月につけた1800ポイント強ですが、2007年2月26日を100として各業種の変化率を見ると、5~7割上がっているものも確かにあります。しかしこれは、いちばん上がったゴム製品(186)を別とすれば、サービス業(148)、食料品(146)、情報・通信(133)など、内需型企業ばかり。日本を代表するグローバル製造業の自動車・電機・機械などが、全く牽引役になっていません。
一方で、6~7割のマイナスになっているものもあり、それは海運業(▲33)、鉄鋼(▲42)、電気・ガス(▲43)など。個人投資家に非常に人気があり、時価総額が大きい銀行セクターもまだ当時の半値(▲52)です。日経平均という指数が15年ぶり高値をつけただけで、株式市場全体がそこまで回復したわけではないというのはそういう意味です。