有沢 しかし、できあがったものに対して「すばらしい」と、うっとりするだけではなく、しっかり運用しなければ意味がありません。仕組みをつくることが目的ではなく、最終的にうまく運用できて、異動した人にも研修を受けた人にも満足してもらう。つまり、顧客満足度を上げることが目的で、そのためにはトップのコミットメントが絶対に必要なのです。

南 人事こそ経営そのものですね。

有沢 そういうことです。指示されたから人事異動を交付しましたとか、つくれと言われたから制度をつくりましたという仕事は、失礼かもしれませんが、誰にでもできる人事屋さんの仕事だと思っています。

トップにコミットしてもらい、
トップから変革する

みなみ・そういちろう
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。株式会社ビズリーチを創業し、2009年4月、管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設。その後、レコメンド型転職サイト「キャリアトレック」などインターネットサービスを展開。

南 世界を見渡すと、人事は経営チームの一員であることがほとんどですが、日本の場合、人事は請負業のようになっていることが多いと思います。でもそれは人事の責任ではなく、経営者の責任です。有沢さんの話を聞いていて、カゴメは経営者の想いが強いと感じました。実際、人事に対する想いの強さがわかるようなトップの言動はありますか?

有沢 あります。「カゴメ通信」という社内報で、「だらだら働くのをやめよう」と社長自らが働き方の変革を提唱しています。生産性を考えた働き方、ワークライフバランスを考えた行動をとりましょう、と。改革はトップからなので、トップが変わらないと何も変わりません。ですから、まず役員を変えていくために、トップにコミットしてもらっているのです。

 役員報酬改革のときも、役員に対して私が説明しようとしたら「今日これから有沢が話すことはとても大切な内容だ。この議案を通さないのであれば、私の首をとってからにしてくれ」と、トップが先に決意を語ってくれました。すると、役員みんなが真剣に話を聞いてくれますよね。役員の固定報酬を減らして変動部分を多くすることで、不利益になると思われる可能性もありますが、固定と変動の割合が変わるだけなので、頑張り次第で報酬は増えます。そういう会社にしていきましょうとトップが言ってくれたことに私は感動しました。

 よく私は部下に「トップと心中するつもりでやってくれ」と言うのですが、私自身もトップにあいくちを突きつけて、「これをやらなかったら未来はないですよ」と言うくらいのつもりでいます。なぜその施策をやるべきか、論理的に説明して、やることで明るい未来が開けるはずだという絵を見せ、納得してもらい、同意を得るのです。それがとても大切だと思っています。

南 面白いですね。人事部門がここまでビジョンを持ち、逆算して、制度に落とし込み、運用する。他にも、カゴメでの約3年間の間に取り組んだ代表的な事例はありますか?