長年、固定費の高さで関西ペイントに負け続けていた日本ペイントホールディングス。待ったなしの体質改善を進めた結果、国内1位に返り咲き、世界を狙える切符も手に入れた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
世の中に存在するほとんどの産業と関わりがあるにもかかわらず、企業体として顧みられることが少ない塗料メーカーにあって、国内1位の関西ペイントと同2位の日本ペイントホールディングス(以下略)は、熾烈な争いを繰り広げている。
そんな中で、日本ペイントの財務内容の大幅改善が注目を集めている。2008年秋のリーマンショックを受けて、09年4月に緊急登板した酒井健二社長(当時。現会長)が主導した大規模リストラが成果を挙げているのだ。
さらには、リーマンショックの前まで、営業利益や経常利益、純利益で後塵を拝すことが多かった関西ペイントを逆転した上で、世界の市場で大きく引き離すという“一発逆転劇”の途上にもある。
これまでの日本ペイントにとって最大の課題は、固定費の高さにあった。ある業界関係者は、「日本ペイントは、関西ペイントより粗利(売上総利益)が約100億円多いにもかかわらず、販売管理費及び一般管理費(販管費)は関西ペイントより約200億円も高かった。その結果、営業利益では、日本ペイントより関西ペイントが100億円上回るという不可解な状態にあった」と解説する。
要するに、日本ペイントは深刻な“メタボリック体質”の状態にあり、リーマンショックの影響で営業利益が激減した事態を受けて、固定費の削減が急務となったのだ。そこで、子会社の経営を立て直した功績により本社に呼び戻された酒井社長が、英国駐在時代に培った是々非々のロジックを本社に持ち込み、大手術を断行した。