最近、わが国の製造業、特に自動車や建設機械の分野においては、中国での堅調な販売実績が一段と鮮明化している。

 昨年のリーマンショック以降、中国経済は世界の主要国の中で最も早く立ち直り、今や自動車などで「世界最大の需要地」になりつつある。その中国市場での実績が、わが国企業の収益力を左右するほど大きな影響を与えている。

 実際、大手自動車メーカーのケースはその最たる例だ。今年1-7月の日産自動車の販売実績を見ると、すでに中国での販売台数(40万3000台)は、国内の実績を5万台以上凌駕している。それに伴い、中国関連の事業によって、今期通年ベースで最大400億円程度の利益貢献を見込むという。

 同社の2010年3月期決算の予想が、1000億円程度の営業赤字であることを考えると、いかに中国ビジネスの貢献度が大きいかがわかる。

 また、ホンダの中国での販売台数も国内の販売台数に肉薄しており、同社の2010年3月期の予想利益見込み700億円のうち、約500億円を中国関連で稼ぎ出すとしている。

 それに伴い、自動車の関連産業である工作機械や金型などのメーカーも、中国シフトが鮮明化している。

 そうした状況は、自動車に限らず他の分野でも見られる。中国のインフラ投資に関連する需要増が期待できる建設機械や農業機械などもそうだ。

 建設機械大手のコマツの中国における売り上げは、すでに国内よりも大きくなっており、農業機械の井関農機でも、同様の現象が起きている。さらに、スーパーなどの小売りや化粧品など、生活雑貨を扱う企業も、高い成長性が見込める中国でのビジネス拡充に注力している。

 足元の世界情勢を見ると、成長性が見込める中国市場に多くの経営資源を配分することは、企業にとって自然なことであり、有効なストラテジーである。だが一方で、「過度な中国依存」にはリスクがあることも忘れてはならない。

 そもそも中国では、政府の政策などによって、経済情勢が一夜にして大きく変わることがあり得る。たとえば、政府がある分野で国内企業の育成に一層注力する方針に変わると、わが国をはじめとする海外企業を取り巻く経済環境は、様変わりしてしまう。

 ある商社のベテラン中国担当者の1人は、「中国でのビジネスは、常にリスクと隣り合わせという意識が必要だ」と指摘していた。