写真提供:資生堂
「ブランド価値の伝道師」──。化粧品最大手、資生堂の魚谷雅彦社長は4月末の中期経営計画発表の席上、美容部員をこう称して彼女らを11年ぶりに正社員採用するという戦略転換を打ち出した。
2017年12月期を最終年度とする中計の最終目標で、連結売上高9000億円(15年3月期、同7777億円)を掲げる中、国内市場のてこ入れの一つに美容部員の正規採用を盛り込んだのだ。
美容部員は「ビューティーコンサルタント(BC)」と呼ばれ、百貨店などで顧客の年齢や肌質に最も適した化粧品を提案するという店頭販売の最前線を担う。低迷する国内化粧品市場にあって、正社員BCに掛かる高い人件費は、長く頭痛の種とされてきた。また、急伸するドラッグストアにも多くのBCを割く必要が出たため、資生堂は06年4月以降、BC採用を全て契約社員に切り替えていた。
それが、なぜ今、正規雇用の復活なのか。
「コストという視点はよく指摘されるが、どうやってより戦力化するかを考えた」と魚谷社長。その言葉の裏には、BCが本領を発揮する高価格帯商品の消費回復がある。化粧品大手、コーセーも資生堂に先駆け、昨年から美容部員の正規採用と契約社員の正社員化を再開した。目下、「一部で優秀な美容部員の取り合いも起きている」(業界幹部)のだ。