では、関西の商品をどうてこ入れしていくのか。普通は真っ先にオリジナル商品を作りたくなるものだが、石橋氏が選んだのは、地道な基礎の見直しからだった。

 米飯、パン、麺。商品のベースとなる食材の質を上げることに、とことん取り組んだ。

 もちろん、関東とレシピは同じで、関連するメーカーの陣容もほとんど変わらない。にもかかわらず、日々、鈴木会長が試食する緊張感の中で鍛えられた関東の“セブンクオリティ”とは、明らかに差があった。

 コメの食感が悪い。麺がぼそぼそしている。石橋氏が試食し、基準に満たない味の商品は、3ヵ月で20種類以上撤去させた。同時に、メーカーの担当者を関西の工場に呼び、炊飯などあらゆる製造工程を一つ一つ見直していった。

関西限定のざるそばや肉じゃが
伸び率で全国首位に

ざるそばのつゆを変え、肉じゃがは牛肉を使用し、厚焼き玉子はだし巻き玉子へ。関西に合った限定商品が大ヒット

 地道な努力を続け、3ヵ月を過ぎたころ、商品の売り上げが伸び始めた。「関西でも、商品の質が上がってきた」と手応えを感じた石橋氏は、ようやく地域に合った商品の開発に取り掛かる。第1弾はざるそば。麺は全国共通だが、つゆを変えた。

 関東のつゆは味が濃いが、関西は薄い。麺をつゆに軽くつけて食べる関東と、しっかりとつゆにくぐらせる関西では、ざるそばの食べ方そのものが違った。

「セブンのざるそばの理想型はこれだ、という思い込みが社内にあった」と石橋氏。関西でざるそばは売れないことがセブンでは常識とされ、CMさえ打っていなかった。だがそれは大きな間違いで、関東風の商品が地域の嗜好に合っていなかったのだ。

 つゆの味付けを変えてオーナーたちに試食をしてもらったところ、「つゆを変えてほしかったんだ」と喜びを持って迎えられた。6月下旬に販売を開始すると、低迷していた関西地区のざるそばの販売個数が、全国平均を超えた。

 次に取り組んだのはPBの肉じゃがを関西風に見直すことだった。関西で肉といえば牛肉が当たり前。だが、全国共通の商品では豚肉を使用していた。

 関西は肉の消費量も多く、とりわけ牛肉を好む食文化がある。石橋氏はそう説明しながら、関西風に変えた試作品を、自信を持って東京の試食会で披露した。しかし、一口食べた鈴木会長に「関西のお客さんは肉が好きなんだろう。これじゃあ、ジャガイモの方が多いじゃないか」と一刀両断に駄目出しをされた。