キャンディーズ、THE MODS、小室哲也…
そうそうたるミュージシャンを次々世に出す
こうしてCBSソニーから生み出されたアイドル歌手は以下のとおり。カッコ内はデビュー・シングル発売年。
天地真理(1971)
南沙織(1971)
郷ひろみ(1972)
浅田美代子(1973)
山口百恵(1973)
キャンディーズ(1973)
日本経済は高度成長の最末期で、成長率はかなり落ちています。オイルショックを経て75年は戦後初のマイナス成長となります。しかし、レコード産業は90年代まで成長を続けました。アナログのオーディオ機器の性能が向上し、価格が下がっていったこともあります。団塊の世代が大学生となり、フォークソングがブームでギター人口が急増していました。
丸山さんは33歳でアイドルから離れ、新しいジャンルを任されることになります。
自分でゼロから開拓しなきゃいけないわけ。知り合いがいないのだから、どうにもならないよね。メジャーな芸能界系の媒体だと、どう逆立ちしても先発組には勝てっこないでしょ。だったら新しいジャンルのほうがいいわけ。新しいジャンルにはまだ先発組がいないんだから。そうなると、そのころできたばかりのニューミュージックしかない。ニューミュージックだと、新しい雑誌もあって、ラジオも、誰も宣伝に行かない深夜放送とかがメインの戦場で、テレビもあんまり関係ない。テレビなんてもともと出してくれないから。ラジオだけやってればいいんだもの。そうしたら後発のおれでもちょっとは仕事ができる。(97ページ)
この時期にデビューしたニューミュージックの歌手は以下のとおり。
太田裕美(1974)
森田公一とトップギャラン(1976、デビューは東芝音楽工業でソニーへ移籍)
渡辺真知子(1977)
中原理恵(1978)
太田裕美と渡辺真知子のデビュー・シングルの発売日はいずれも11月1日で、これは賞取りレースから逃れるためだったのだそうです。
ニューミュージックはすでに死語ですが、フォークソングや歌謡曲との違いはなんでしょう。歌謡曲はレコード会社と契約したプロの作詞家、作曲家がつくる作品でしょうね。フォークソングはアコースティックなギターで自作自演する作品です。ニューミュージックは、洋楽ポップス風のしゃれた楽想だったところでしょうか。自作自演が多いようですが、すべてではありません。当時スタジオ・ミュージシャンだった友人によると、「電子楽器を使うのがニューミュージック」と単純化してくれました。
70年代にニューミュージックは大ブームとなりましたが、80年代の終わりにはまとめてJポップと総称されるようになり、現在もJポップ、Jロックなどと使用されているようです。
78年はCSBソニー10周年で、新しいレコード会社、EPICソニーが設立されます。丸山さんは邦楽責任者となります。
同じことをやって兄貴格のCBSソニーに負けると腹が立つじゃない。それもあって考えて、じゃあロックやれば、賞獲りの競争に参加しなくてもすむんだ、と思ったわけ。さっきも言ったように、賞獲りはとにかく不得意だから。くれるのはもらってもいいと思うけれど、「ください」って言いにいくのがイヤなんだ。(略)だから、一般的に言われているように、ロックが好きだから、おれがエピックをつくったとか、ロックが好きだからロックを仕事にしてきた、っていうんじゃないの。もう全然違うの。レコード大賞を獲るとか獲らないとかっていうことと関わらないですむジャンルがロックだったから、おれがロックやったの(笑)。(105ページ)
当時デビューしたのは。
THE MODS(1981)
佐野元春(1980)
小室哲哉(1989)
こうして日本のニューミュージック、要するにJポップやJロックを切り開いたのが丸山さんなのです。