【橋下徹が引退できない理由 その2】
10年待てば「大阪都」は実現できるから

 橋下徹が引退できない第二の理由は、もう10年待てば「大阪都」を実現できる可能性があるからだ。そもそも、橋下徹人気の根拠は何だったのだろう。

 橋下氏の政治手法は、従来の政治家と比べると極めて異色だった。大阪の街中で堂々と標準語で演説し、ふわっとしたキャッチコピーを捨てて歯に衣着せぬ物言いを貫き、「統治機構」など難しい単語も遠慮なく使う。マスコミの前で真っ向から議論をふっかけ、ツイッターなどを通じてネット上で議論を炎上させ、民衆の目を惹きつける。

 それに対して、従来の政治家のステレオタイプはどういったものだったろうか。誰も聞いていないのに駅前でマイクを握って働いてるフリ。地元の行事や冠婚葬祭に足しげく通うことばかりに時間を使う。口先でカッコいいことを言っても、結局何をしてるのかさっぱりわからず、影では私腹を肥やす――。まるで「民主主義」を大義名分とした壮大なる詐欺商売のようだ。

 当然、従来の政治家の価値観や生き様を否定するもりはない。しかし、従来の政治家の姿が、人々に政治との距離を感じさせ、政治離れを促してきたのは事実ではなかったか。都構想の否決そのものよりも、今回の失敗で残念なのは、「やっぱり政治は何も変えられないんだ」という強烈なメッセージを全国に発信してしまったように感じることだ。

 そして、ネット上で盛んに論争を呼んでいるのが「シルバーデモクラシー」と揶揄される現象である。産経新聞の投票日当日の出口調査の結果では、大阪都構想に対して若い世代は過半数が賛成しており、反対派は現役を引退した高齢世代が大多数を占めた、という話である。大阪の未来を考える選挙で、もう現役を退いた人々の声が結果を左右してしまうのは、極めて残念である。

 今回、全体の投票率は66.83%に及び、普段は選挙に行かない若い世代の有権者も多くが投票所に足を運んだ。しかし、人口そのものの絶対数が多い高齢者には勝てないことが露呈したのである。

 極論・暴論と批判されることを覚悟で言えば、現役を引退した人たちが投票権を持つことは本当に妥当なのだろうか。もうすぐ選挙に行ける年齢が20歳から18歳へと下げられるが、「判断能力のなさ」を根拠として未来を担う子どもたちに選挙権が与えられないのが許されるならば、現役を退いた人たちの選挙権を制約することも、一定の条件の下で許されてよいのではないか。

 筆者自身、選挙に出馬した際、多くの高齢者と触れ合った。年齢にもよるが、彼らの中に判断能力を疑問に思う人もいたのが正直な感想だ。現役を退いたことで情報収集へのモチベーションが著しく低下した方や、そもそもインターネットを使うことができない方もいた。「新党さきがけですか?」と大昔の政党の名前を真顔で出してきたり、「昔からの付き合いだから」と平然としがらみを言ってのける方も、10人や20人ではなかった。かつ、彼らは選挙にはきちんと行くのである。

 こうした状況をどう捉えるべきか――。

>>後編『橋下徹が「引退」できない3つの理由 都構想はあの住民投票で終わったのか?(下)』に続きます。

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