米国アトランタに本社を置くUPSは世界屈指の国際小口貨物輸送会社だ。そのUPSはいまアジアの中小企業の躍動、中流階級の勃興とそれに伴うEコマースの急拡大に熱い視線を送っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 原 英次郎)

1974年デルタ州立大学在学中にUPSのパートタイム積み込み作業員として入社した、いわばたたき上げ。2014年9月より現職。
Photo by Eijiro Hara

──UPSは独DHL、米フェデックスと並ぶ、世界屈指の国際小口貨物輸送会社だ。2014年度の売り上げは582億ドル(約7兆円)、純利益は30億ドル(約3600億円)。ちなみに宅急便のヤマトホールディングスはそれぞれ1兆3967億円、375億円だ。

 そのUPSがいま熱い視線を向けているのが、経済成長著しいアジア、中でもインターネットの普及で急成長を続けるEコマースである。米国アトランタ本社で、同社のデビッド・アブニーCEOがインタビューに応じた。

 おおよそ世界のGDPの2%、米国のGDPの6%が、毎日、UPSのネットワークを通して世界を旅している。これは世界中で働く43万5000人の従業員の貢献なくしてはなし得ないことだ。

 私は1974年にUPSに就職し、勤続40年になるが、当時はまだ米国内だけを相手にしている企業だった。それがここまで大きくなった。今や売り上げ構成比でいうと、75%が国内で25%を国際事業が占めている。

 今後も国際事業の売り上げは伸びるだろうし、特に研究開発・製造・修理などあらゆる活動が行われ、世界のGDPの半分以上を生み出すアジアにはダイナミックな成長機会がある。

 われわれはアジアの産業を支援するために、より高度なサプライチェーン構築の支援をしていく。というのも、アジアには中小企業が何百万社とあり、それが競争力の源泉になるからだ。

 われわれはこれを「起業家経済の台頭」と呼んでいるが、サプライチェーンが改善されるにつれ、こうした中小企業は大企業への単なる供給者以上の存在になれる。直接、世界の消費者に商品を売ることができるからだ。

 ある専門家は、こうした起業家経済を活用することで、これからの25年間でヨーロッパ三つ分にも相当する巨大な経済が付け加わると予想している。

 アジアの成長でもう一つ見逃せないのが、中流階級の勃興だ。アジアの中流階級の人口は、20年までに現在の3倍、17億5000万人以上になるという予測もある。そうなると、世界の中流階級の半分が、アジアに住むことになる。

 中流階級の増加は、消費支出を増やし、小売市場を拡大させるだろう。インターネットとアジア各国政府の貿易規制の緩和が相まって、消費者の購買行動は速いスピードで変化しつつあり、「グローバル・コマース」の時代が現実のものとなりつつある。

 オンライン・ショッピングではアジアほど熱い市場はない。アジアは世界の人口の約6分の1を占めるが、昨年のオンライン・ショッピングの購入額では世界の46%を占め、総額は5800億ドルに達して、初めて北米を上回った。17年までには、アジアのEコマースの売り上げは1兆ドルを超えると期待されている。