あるテレビ番組のインタビューの際に、定額給付金の使い途に関する取材結果を見せてもらった。取材は、関東圏の地方都市2ヵ所が対象だが、定額給付金を何に使うのかを一般市民に聞いて、その(多くは商品の)写真がスタジオに数百枚並べられていた。
通常の生活費に充てる、旅行に使う、家電製品など耐久消費財を買う、外食に使う、貯金するなど、市民が答えた使い途はじつにさまざまだったが、印象としては、生活費に充てるという回答が多かった。大きな金額ではないので、給付金を受け取ったらお財布に入れて、通常の生活費に回すというのは、ごく常識的な行動だ。
考えてみると、定額給付金に対する「正しいアドバイス」と「景気対策としての効果」とのあいだには矛盾がある。
使い方についてアドバイスするとすれば、最初に踏まえておくべき「常識」は、収入の形態によっておカネを区別して扱ってはいけないのだから、定額給付金を特別扱いせずに、全体として最適なおカネの扱い方を考えよ、ということだ。
貯蓄も、それなりに合理的な回答だ。特に、将来の増税を予想するなら、現在受け取ったおカネを貯蓄や投資に回して、将来の支出増に備えるというのは一理ある。経済学者が喜びそうな回答だ。
テレビ局の調査に対する回答にはなかったが、現実には、借金の返済に充てるという使い途があるとすれば、これが最重要かつ最も効率のいい使い方だ。返済に勝る運用はない。
一方、景気対策の点から見ると、できれば「定額給付金があったがゆえに行なわれた追加的な支出」が拡大してほしいところだ。給付金が通常の生活費に回って、結果として通常よりも貯蓄が増えたり、あるいは直接貯蓄に向かったりするのでは、需要のサポート効果が乏しい。この点、今回は一人1万2000円、対象年齢によっては2万円という、多くの人にとってごく冷静に考えられるであろう金額であったから、これによって消費者の財布の紐が大いに緩むという感じはない。