日本全国の過疎が進んでいるような地域に、引きこもる人たちが数多く存在していることは、これまでも取材や講演などで各地を訪れるたびに聞いていた。しかし、そんな実態の一角が、現状に即してデータとして示されるということは、孤立や無縁化の進むこの国の今後を議論していくうえでも、重要な第1歩になると言っていい。
秋田県の山あいにある、人口約3900人の小さな町で行われた実態調査がいま、ひそかに注目されている。
18~55歳の町民1293人中
8.74%が「引きこもり」
秋田駅から奥羽本線の特急列車に乗って、二ツ井駅まで約1時間。駅から深い雪景色を楽しみながら車で20分ほど山あいに入ると、同県藤里町の町並みが見えてくる。
そんな町の社会福祉協議会が実施した調査によって、18歳から55歳までの町民のうち、少なくとも113人が長年、仕事に就けない状態で引きこもっていることがわかったのだ。
2011年11月1日現在の対象年齢に当たる町民は1293人。引きこもる人たちが占める割合は、8.74%に上る。実に、ほぼ10人に1人が引きこもっていることになる。
この比率は、厚労省が2010年に公表した「20~49歳までの対象者1660人に占める引きこもり経験者は1.2%」に比べてみると、はるかに高い。
興味深いのは、内閣府が同年7月に公表した実態調査の報告書でも、東北地方の引きこもり群が3.3%、引きこもり親和群(予備軍)が6.0%。合わせれば9%となって、同町の調査ともほぼ合致していることだ。
しかも、そのうち40歳以上は、52人。引きこもりの人たちの半数近くは、内閣府の定義した「39歳以下」に当てはまらない、支援の対象からこぼれ落ちた人たちであり、一層の高年齢化が進んでいることを浮き彫りにしている。
たまたま筆者が近畿地方の山あいの村を別件取材で訪れたときも、ある年配女性の村民は「私が知っているだけでも、7人の引きこもりがいるよ」と教えてくれた。