山あいにある秋田県藤里町は、世界遺産の認定を受けた手つかずの大自然「白神山地」のふもとに位置し、その観光ルートの入り口にあたる緑豊かな町だ。
豪雪地帯としても知られ、冬になると、青森県側へと通り抜けが可能な道も閉ざされる。
過疎化が進み、基幹産業だった農林業は衰退。国道がなく、JRも私鉄も通っていない袋小路の町である。
その一方で、隣接する能代市への通勤圏内として、町には町営住宅なども建設され、元々あった集落と新たな住民とが共住する。しかし、町内に常駐する医師がいない「過疎地域」特有の医療問題を抱え、年々、人口減少が続いている。
そんな町の社会福祉協議会が実施した調査によって、18歳から55歳までの町民1293人の8.74%にあたる113人が、長年、仕事に就けない状態で自宅などに引きこもっていることが明らかになったのは、前回の連載でも伝えた通りだ。
しかも、そのうち40歳以上は、52人と半数近い。年齢別の内訳をみると、40歳以上49歳以下が40人。50歳以上55歳以下が12人に上るなど、地域から「消えた高年齢者たち」の存在も浮かび上がる。
もちろん、これは藤里町だけの話ではない。日本の地域全体にみられる普遍的な問題だ。
全国各地で放置されてきた
40歳以上の「引きこもり」
今回の調査は、同町社会福祉協議会が、就労支援や機能訓練、地域の人たちとの交流の場で福祉の拠点となる施設『こみっと』の事業化のため、地域で孤立する人たちのニーズを把握しようと、2010年2月から2011年8月にかけて訪問調査した。いわゆる「藤里方式」(藤里町社協方式)である。
その際の定義は「不就労期間がおおむね2年以上」「家族以外の人との交流や外出の機会がほとんどない」というものだ。