「1分」を大事にする意味は、どこにあるのでしょうか。「何のためにここにいるか?」をきちんと伝える時間だからです。伝え方を間違えると、お客様は逃げてしまいます。当たり前だけど、ほとんどの人ができていない1分の作法を紹介しましょう。
7月17日発売『セールスは1分で決まる!』連載第10回。
相手の耳と心をこちらに向けるための空気をつくる
セールストークは最初の1分が勝負です。
自分の話を聞いてもらうには、お客様にこちらを向いてもらわなくてはいけません。私の話を聞く準備をしてもらわなくては、これから話すことがお客様に伝わらないのです。
1分ですから、もちろんプレゼンの本題には入りません。
「こんにちは。ビ・マジークの宮崎です」
ここからプレゼンが始まります!
「スタッフの皆さんが弊社の商品をとても気に入ってくださって、大変光栄です。責任者の方にぜひ説明してほしいと言われましたので、今日は参りました!」
「御社が探しているものにピッタリの商品があるので、持って参りました」
ここで大切なのは、「セールスをしに来ました。どうか私の話を聞いてください」という空気をつくらないことです。
自社の商品を買ってもらいたいから来たのではなく、「御社のお役に立つために参りました!」「御社に良い情報をお伝えするために来ました!」という形を取るのです。
間違いなく、この1分でその後の話の進み方が決まり、先方の受け取り方もまったく違ってきます。
「今日はお時間をいただきありがとうございます。弊社の商品をぜひ御社に扱っていただきたくご説明に参りました」と商品を主軸に話を始めると、先方は、「じゃ、とりあえずこの人の話を聞いてあげよう」という意識になります。
話が長引くと、「早く終わらないかな。忙しいんだけど……」と思ってきます。
でも、「最初に御社のためにやって参りました」という流れをつくると、「うちの会社のためになる情報なんだ。どんな話だろう?」と真剣に聞いてくれるのです。
その空気をつくるのが、開始1分なのです。
ちなみに私は、初対面の方に「はじめまして」という挨拶はしません。
「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」と普通の挨拶言葉を使います。
お互いに初対面だと緊張するものです。そこで「はじめまして」と言ってしまうと、初対面であることをわざわざ念押しすることになります。
「この人、どんな人なんだろう?」と相手にいろいろ考えさせてしまうのです。
相手が先に「はじめまして」と挨拶をしても、私は「はじめまして」とは返しません。
「こんにちは、今日は寒いですね」というような返事をします。
そして、この「こんにちは」の次がとても大切です。
「資料をお持ちしました。それでは説明させていただきます」などと絶対言ってはいけません。
では、「御社のために!」という切り出しができない相手の場合は、どうすればいいでしょうか?
そのときは、返事をしてくれるまったく関係のない話をします。
YES・NOで返事ができる会話は避けます。
「こんにちは。ビ・マジークの宮崎です。あっ、このコーヒーカップ私の家と同じです!」
「えっ、そうなんですか? これ飲みやすいですよね」
「その名刺入れ、たくさん入りそうですね。私の名刺入れ、あまり入らなくてすぐパンパンになるんですよ」と言いながら名刺入れを見せます。
「これすごく使いやすいですよ。○○で買いました」
「これすごく安いコーヒーなんですけど、弊社のスタッフが入れたらすごくおいしくなるんです。不思議なんですけど。どうぞ」
「そうなんですね。じゃ、ビ・マジークさんの不思議なコーヒーいただきます」という感じです。
仕事の話とはまったく関係のない話なので、相手は一瞬、「えっ?」と感じるのですが、必ず返事をしてくれます。
そこで会話のキャッチボールが始まるのです。
一方的に話を聞くのではなく、すでに会話が始まっているので、相手が自然とこちらの話を聞いてくれるのです。
世間話の流れのまま自然とプレゼンに入るので、警戒心を持たずに耳を傾けてくれます。
そうすると、こちらの言いたいことが伝わりますし、何よりそういう柔らかな空気をつくることは、自分自身が一番楽しく話ができることにつながるのです。
開始1分で何を伝えるか?
それは、相手の耳と心をこちらに向けるための空気をつくるひと言なのです。
POINT
セールストークは最初の1分が大事!
最初に目的をはっきり伝えて、
主役はあくまでも買い手という意思を示しましょう。