防衛省は8月31日、平成28年度(2016年度)防衛予算の概算要求を決定した。総額は5兆0911億円で、今年度に比べ2.2%増で過去最大となった。これには在日米軍の再編・移転に関する経費1472億円や政府専用機の140億円も含まれているが、それを除いた本体の防衛予算でも4兆9299億円だ。
普通国債残高が今年度末には807兆円に達すると見られる激しい財政赤字の中、防衛予算は1998年度から2003年度までは4兆9000億円台でほぼ横ばい、2004年度から2012年度にかけては減少して4兆6000億円台になった。だが同年末に第2次安倍内閣が成立して以後、2013年度から増加に転じ、来年度には5兆円を超え、4年連続の増加となりそうだ。
今回の概算要求には、自衛隊の海外派遣にも有用な、航空輸送が可能な機動戦闘車36輌(計269億円)、道路脇爆弾などに耐えられる輸送防護車4輌(9億円)、大型で航続距離6500kmのC2輸送機1機(229億円、試作機は2010年から納入)などもある。
ステルス戦闘機よりも
高額なオスプレイ
だが、尖閣諸島や東シナ海での中国との戦闘を考えた「周辺海空域における安全確保」と「島嶼部に対する攻撃への対応」のための項目が多い。上陸作戦を専門とする陸上自衛隊の「水陸機動団」(約3000名)編成のための施設建設に109億円、奄美大島、宮古島の警備部隊用の敷地造成や用地取得に194億円などが並ぶが、最大の品目は垂直離着陸ができる小型輸送機MV22(オスプレイ)12機だ。
オスプレイは「中期防衛力整備計画」(2014年~2018年度)で17機を購入することになっており、2015年度に5機で516億円、加えて米軍によるパイロット、整備員らの訓練などの関連費が95億円で計611億円(1機当たり122億円)とされている。来年度概算要求では12機で1321億円と教育費が219億円で計1540億円(1機当たり128億円)が計上されている。
ところが今年5月5日に米国の国防安全保障協力局が米議会の武器輸出承認を得るために提出した案では、日本に輸出するMV22が17機と予備エンジン40基、赤外線前方監視装置、ミサイル警報装置、訓練費などを含むと計30億ドル(約3600億円)となっており、1機当たり211億円にもなる。