独フォルクスワーゲン(VW)とスズキの提携解消問題がついに決着を見せた。2011年9月にVWとの提携解消を発表したスズキだが、その後、事態は国際仲裁裁判所での仲裁交渉に発展。4年にわたる泥仕合に終止符が打たれたが、VWから得られるはずだった環境技術の問題は宙に浮いたままだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)
「今般の仲裁判断は、スズキが求めていた通り、フォルクスワーゲン(VW)との包括契約は終了し、VWはスズキ株を返還しなくてはならないという結論になりました。スズキとしても満足しております」
8月30日の日曜日、記者会見に臨んだスズキの鈴木修会長は、終始うれしそうな様子だった。
それはそうだろう。支配権を強めようとする独VWに対し、不信感を抱いたスズキが提携解消を発表したのは4年も前の2011年9月。しかし、VWはすんなりとは提携解消に応じず、事態は国際仲裁裁判所での仲裁交渉にまで発展。4年にわたる泥仕合にようやく決着がついたからだ。
「喉につっかえていた小骨が取れて、非常にスッキリしました」(鈴木会長)
今回の仲裁判断を受けて、スズキはVWが保有するスズキ株19.9%を全て買い取る。8月31日の終値で計算すると、買い取り価格は約4600億円に上る。
VWにしてみれば、むしろこのタイミングでの決着は“渡りに船”だったといえる。何しろ、VWにとって最大の“ドル箱”である中国市場で販売減に歯止めがかからず、減産対応に追われているからだ。今年1~7月の新車販売台数では、世界首位の座もトヨタ自動車に奪還された。
VWがスズキ株を取得したときの金額は約2200億円だから、VWは2倍以上のリターンを得ることになる。VW自身、「スズキ株の売却により、収益の改善を期待している」とコメントしている。
しかも、VWでは今年4月に内紛が表面化。フェルディナント・ピエヒ監査役会長(当時)が、マルティン・ヴィンターコーン社長の任期延長に反対したことを発端に、ピエヒ会長が辞任する事態に発展してしまったのだ。
スズキとの提携を決めた09年当時、VW側でこれを主導したのは他ならぬヴィンターコーン社長だ。内紛の渦中にあって自らの非を認めるわけにはいかなかったのか、「スズキに対し、損害賠償を求める権利を得ることにこだわった」(VW関係者)。自分は間違っていなかったという“メンツ”を保つことが必要だったわけだ。